ヘルスケア通信

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「メタルフリ―」へと続く道・Part9 ダイレクトボンディングについて

 今夜のヘルスケア通信は、「メタルフリ―」へと続く道の第9夜。いよいよダイレクトボンディングの症例です。
 ダイレクトボンディングに関しては、今までも何度かご紹介していますが、改めて新しい症例も交えてお話しをしたいと思います。

 「ダイレクトボンディング」とは、一言で言うと、「虫歯の治療や歯の形態修正、形態回復を、保険外の高強度プラスティックを使って、精密に接着修復する治療法」と言えます。

 まずは症例をご覧ください。
 症例1. 60歳、男性。
何度も出てきますが、メタルインレーのセメントが劣化してはがれた症例です。
下は術前写真です。
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 術後です(下写真)。
歯の咬み合わせの部分の溝や、しわ、着色までプラスチックで再現しています。
 マイクロスコープの8倍拡大でも、修復部と天然歯の部分の境い目がわからないぐらい精密な修復を行っています。
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 症例2. 38歳、女性。
やはり、メタルインレーのセメントはがれから感染を起こした2次虫歯症例です。
術前です(下写真)。
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 レントゲンで見ると、歯とメタルインレーの境い目から黒く虫歯が入っているのがわかります。(下写真黄色矢印)
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 しかし、問題はそれだけではなく、赤い線の囲みの部分、以前の治療で虫歯の深い所をプラスチックで埋めてあるのですが、その下のかなり深い部分まで虫歯が回っています(下写真赤矢印)。
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 まずは、メタルインレーを外します。金属との境い目から黒く感染しています。
 内部の古いプラスチックも接着はがれを起こして浮いてしまっています。
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 もちろん、古いセメントも古いプラスチックも徹底除去です。
 その上で、虫歯も染色して徹底的に除去します。下の写真では、エナメル質の部分にまだ黒い着色が残っていますが、もちろんこれも除去します。
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 ダイレクトボンディングにて、左上第2小臼歯を修復しました。
 咬み合わせの溝や、着色、色むらも再現し、やはりマイクロ8倍拡大画像でも境い目のわからない精密な修復を行っています。
 隣の歯の古いプラスチック充填と比べて見て頂けたらと思います。
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 症例3. 60歳男性。
 同じくメタルインレーが剥がれて脱落しました。
 前にも書いたように、メタルインレーの脱落→2次虫歯という症例は日常的に起こっています。
 一度メタルインレーとして大きく削られた歯へのプラスチック充填は、よほど注意して接着修復を行わないと、術後の咬合痛や不適合、知覚過敏が起こりやすく、想像以上に非常に難易度が高い治療になります。
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 この症例も、やはり、ダイレクトボンディングによる精密接着修復をさせて頂きました。
術後(下写真)です。ちょっと見では、治療してある歯とは見えないリアルな再現をしています。
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 ダイレクトボンディングは、以前に「失われた歯を取り戻す、・・本当の意味の「修復」を目指して。」と言うタイトルでご紹介したことがあります。
 その記事の通り本当に「リアル」な修復が魅力ですが、本当の価値は、前にも述べましたが、精密な虫歯除去と接着修復にあります。
精密な接着修復と、リアルな歯の再現を、1~2回の治療で一気に行いますので、ダイレクトボンディングは1回が非常に時間がかかる治療になります。
しかし、術後は本当に患者様に喜んでもらえる治療でもあります。

 さて、これまでは「1本だけの治療」の症例を拡大して、どの程度精密な修復ができているかを見ていただきましたが、実際のところ、患者様がご自分の歯をここまでの拡大で見る事はありませんし、まして他の人に(歯医者さん以外(^^;)ここまで拡大して見られることはありません。
 ですから、くどいようですが、「リアルな修復」がダイレクトボンディングの目的ではありません。その価値と目的は精密な接着修復にあります。
 でも、メタルフリー修復として、かつて無造作にたくさんのメタルインレーが入っているお口の中にダイレクトボンディングを行うと、その価値が引き立ってきます。

 症例4. 58歳女性。
奥歯に3本のメタルインレーが入っています(黄色矢印)。昔はこんな治療が当たり前でした。
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 ダイレクトボンディングで、すべて審美修復しました(下写真黄色矢印)。
お口の中が明るくスッキリとして、とても健康的に見えます。
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 最近はデジタルテレビが良くなって、芸能人を見ていて思うのですが、お口の中の見え方で、人の印象が大きく変わる時があります。

 メタルフリー修復が、何より精密治療として、そして金属を使わない健康的な治療として、そしてお口の印象を変える審美治療として、大きな価値と魅力を備えている事をわかっていただけたらと思います。

# by healthcarenews | 2019-04-16 00:18

「メタルフリ―」へと続く道・Part8 接着治療における「虫歯除去」について

 今夜のヘルスケア通信は、「メタルフリ―」へと続く道、の第8夜。接着治療における「虫歯除去」と「前処理」についてです。

 接着治療には、その前準備としての「精密な下地の処理」がとても大切!って話は前回しました。
その前準備として挙げられるのが、

1.古い詰め物の確実な除去
2.徹底的な虫歯の除去
3.適確なエッチング、プライマーなどの前処理

となります。今夜は、その中でも1.と2.を中心に症例を交えてご紹介したいと思います。

 症例です。ほとんどがマイクロスコープによる写真ですので、見にくい所があると思いますがご容赦下さい。

症例1
 40歳、女性。左上奥歯に強い痛みがあるという事で来院なさいました。
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 診てみると、大臼歯に古いプラスチックが詰めてあり、「接着はがれ」を起こして浮いてしまっています。
 新しい充填と、古い充填が入り交じり、もう、いわゆる「つぎはぎ」の状態になっていました。
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レントゲンで見ると、矢印の部分のプラスチックの下に虫歯ができていました。
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 下の写真は、古い詰め物を少し外したところです。古いプラスチックの下に穴が開いています。
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 精密な接着のためには「古い詰め物は徹底的に除去!」が原則です。
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 マイクロスコープで見ながらだいぶ取ったのですが、まだプラスチックの一部が残っています。
 必要な部分だけを十分に削り、かつ、余計な所は削り過ぎない!、ということは、当たり前のようですが、狭いお口の中の見えにくい所でそれを実行するのは、とても大変な事なのです。

 ここで、より完全に虫歯を取るために、虫歯染め出し液(う触検知液)を使います。
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染めて見るとびっくり。まだまだこんなに染まります。
 さらに虫歯を取り除いて・・・、
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もう一度染め出しをします。
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 大部分は取れましたが、エナメル質と象牙質の境い目や、虫歯の深い部分にまだ少し青く残っています。
 ここまで来ると、普通のドリルでは届きにくいため、超音波器具やハンドのエキスカベータ―などいろいろな器具でトライします。
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 上は全部、虫歯を取り切った後の写真です。大きく削ったように見えますが、隠れている虫歯を取るとこれくらいの削除は必要でした。

 精密な接着の前準備としては、これだけ徹底的に虫歯を取る必要があります。逆に、ここまで削除をすると、治療には精密な接着修復を行わないと、術後の疼痛や、強い知覚過敏に悩まされることになります。

 この症例でも、ここまで虫歯を削除した後、接着修復を行うことで、神経を取ることなく痛みが治まりました。
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症例2
 29歳、女性。やはり左上に違和感と一時的な軽い疼痛がありました。
レントゲン診査で虫歯を認めたため、治療を行いました。
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古いプラスチックを除去すると、中にカリエスが見つかりました。
上の写真は、1回目の虫歯染色をした直後の写真です。中が青く染まっているのがわかります。
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 上の写真は、さらに虫歯除去を続けて2回目の染色の後の写真です。
かなり虫歯を取りましたが、まだエナメル質と象牙質の境い目や、神経に近い部分にわずかに青く残っています。
この部分は、実際、拡大視野で直接覗いて取らないと、確実な虫歯除去が難しい部分です。
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 上の写真は、虫歯を徹底的に除去した後の写真です。
隣の歯との境い目の部分も完全に虫歯除去できて、キレイなエナメル質が見えています。
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 充填後です。マイクロスコープによる8倍の拡大視野でも、歯とプラスチックの境い目がわからないくらい精密な充填ができています。

 虫歯治療の原則は、できるだけ歯を削らないMI、ミニマルインターベーション(最小限治療)です。
これは大原則なのですが、最小限治療にこだわりすぎて、削り足らなくて虫歯を取り残すのは、本末転倒で絶対にやってはいけない治療になります。
 (ただし、唯一、神経に非常に近い虫歯だけは、意図的に、一層虫歯を残す時があります。これな特殊なケースです。)

 虫歯除去という、歯科医師にとってはごく当たり前の治療なのですが、実は非常に奥が深く、難しい時もあります。
ていねいにやると、すごく時間がかかる時もあります。ご理解をお願いしたいと思います。


 最後に、虫歯除去後の下地の前処理の話を「簡単」にしておきましょう。
前処理、とは、歯に接着しやすくするための前準備と思ってください。
また、すべてを必ず行う必要がある訳ではありません。必要に応じて取捨選択をして行います。

1. 虫歯除去した後の歯の接着面を細かい目のドリルで仕上げます。その方が接着力が上がります。

2. エナメル質部分のみ、エッチング剤にて一層溶かして、ザラザラにします。決められた処理時間を厳守します。

3. プライマー液で、象牙質を一層溶かします。
 エナメル質と象牙質は性質がまったく違うため、それぞれ決められた薬剤で、決められた時間と処理方法を厳守します。ここが大きく接着力を左右します。

4. セラミックや、すでにプラスチックが詰められている所には、セラミックプライマー(シランカップリング剤)という薬剤が必要です。これも使用法厳守です。

5. プラスチックの充填は、プラスチックが硬化する時にわずかに収縮するため、その収縮量と方向を考えて充填をしていきます。
 また、プラスチックの色はもちろん、硬さもたくさんの種類があり、場所により使い分けます。

6. 接着の仕上げとして光照射を行います。多方面からできだけ長く照射し、十分に硬化させます。確実な硬化のために酸素を遮断するオキシガードと呼ばれる薬剤を使う  時もあります。

 これ以外にも、確実な接着のためには、考える事、行う事は多岐にわたるのですが、まあ、いずれにせよきちんと接着するためには、いろいろな条件に注意して、ひとつひとつの行程を確実に行う事が大切という事になります。

 確実な「メタルフリ―」修復を行うためには、本当に時間がかかります。患者様も僕もクタクタになってしまう事もあります。

 しかし、虫歯除去にしろ、前処置にしろ、正確な充填にしろ、ひとつひとつ手を抜くことなく正確に仕上げる事で、精密な接着が成り立ちます。この記事がその点をご理解いただける一助になれば幸いです。



# by healthcarenews | 2019-04-01 23:11 | 虫歯治療・MI治療

「メタルフリ―」へと続く道・part7 現代歯科治療でもっとも大切な「接着治療」

 今夜のヘルスケア通信は、「メタルフリ―」へと続く道、の第7夜、テーマは「接着治療」についてです。

 前回の最後の部分で、歯の寿命を延ばすために当院が力を入れているメタルフリ―治療は「ダイレクトボンディング」と「セラミックインレー」と書きました。
 正確に理解をしておいていただきたいのですが、その治療が、患者様にとって「有益」と思い、勧めているのは、実は「メタルフリ―」だからではありません。
きちんと「接着」をして行う「接着治療」だからです。

 もちろん金属を使わない、というメリットはあると思いますし、何より自然な白い歯が入るということは、患者様にとって大きなメリットだとは思います。

 しかし、歯の寿命を延ばすのは、単に「セラミック」を使っているから、とか、「保険外のプラスティック」を使っているから、ではありません。十分な時間と手間ひまをかけて、精密に「接着」を行っているからです。
 ですから「接着治療」は現代の歯科治療の中でもっとも大切なテクニックのひとつと言えます。
では、「接着」とはどんなものなのか?今夜はそれがテーマです。

 まずは「接着」の説明をする前に、従来型の「セメントで着ける」合着(ごうちゃく)と呼ばれるテクニックの話をしましょう。
 「合着」とは「メタルインレー」の所でも話をした、従来型のセメントで金属を歯に着けるテクニックです。とても簡便でいいのですが・・・
このメタルインレーが(下の写真)・・・、
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 悪くすると、数年後にはセメントが溶けて、こうなります(下の写真)・・・。
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 こちらのメタルインレーも・・・、
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 こうなります・・・。
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 なぜ、こうなるのか?理由はいろいろですが、それはちょうど、セメント(モルタル)で留めてあるタイルや敷石が、風雨や車に踏まれて「年月と共に劣化してはがれる」のと似ています。

 ちょうど、下の写真のような感じですね・・・。
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 この「セメントはがれ」が、悲惨な結果を生むのは、前に説明した通りです。

 こうならないために、長い期間をかけて開発されたのが、歯科の「接着治療」なのです。

 では、「接着」をどう説明したものか・・・?とりあえず教科書から、その「接着治療」の説明だけ抜粋してみましょう。

「ボンディングレジンは、歯質とコンポジットレジンを接着させる成分である。エッチングにより被着歯質表面を処理し、プライマー成分を浸透させ、プライマーが浸透した部分にボンディングレジンが浸透し重合することで、レジンと歯質の接着が成立する。」(歯科用の教科書、保存修復学21、第3版、永末書店、よりの抜粋)

 はい!判らないですね(笑)。書かなきゃいいのに・・・(^^;。
でも、いきなり例え話をするよりも、ちゃんとしたエビデンスのある話に基づいて解説をしていった方がより良いでしょう。
言葉の説明を、ひとつずつ加えていきたいと思います。

・「ボンディングレジン」とは、歯科用接着剤(ボンディング剤)の事です。この接着剤の取り扱いが、「接着治療」の中心になります。
・「歯質」そのものズバリ、歯の事です。
・「コンポジットレジン」、歯に詰める白いプラスティックの事です。レジンだけでは無く、セラミックなども「接着治療」が必ず必要になります。
・「エッチング」および「プライマー」、エッチングは歯のエナメル質に、プライマーは、歯の象牙質に作用します。両者とも簡単に言うと、歯の表面を一層溶かす材料です。

 改めて、接着の流れを、簡単に説明してみましょう。
1. 虫歯を取り残しが無いように削ります。

2. エナメル質はエッティング剤で、象牙質はプライマーで、歯の表面を一層溶かし、ミクロンレベルの穴を開けます。

3. そこにボンディング剤(接着剤)を流し込み、光を照射して硬化(重合)させます。

4. プラスティックはもともとボンディング剤と化学的に結合するため、ボンディング剤の上に充填し、光硬化(重合)させることで接着が成立します。

5. セラミックは、内面を同様にセラミックプライマーで一層溶かし、ボンディング剤を流し込んでからレジンセメントで歯と接着します。

 プライマーが溶かした象牙質のすきまにボンディング剤が流れ込んだ部分(接着層)を、難しい言葉ですが「樹脂含浸層(じゅしがんしんそう)」と言います。
この部分は、大体厚さが10ミクロン前後。電子顕微鏡で確認するくらいのレベルです。
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 いわゆる、従来型のセメントに較べ、「接着治療」が、ほとんど「スキマの無い修復」を実現できるのは、このボンディング剤の開発によります。

 もう一度、「合着」と「接着」について話を整理をしておきましょう。

 「合着」は、虫歯を型を取りやすいように外開きに少し大きめに削り、型を取ってその形に合わせて金属を作り、タイルをはめ込むようにセメントで歯に着けます。
その欠点は、前にお話しした通りです。

 「接着」は、歯の表面、および、接着する側のプラスティックやセラミックの表面を溶剤(プライマー)で一層溶かし、そこに柔らかなプラスティック(接着剤)を流し込んで硬化させ、ミクロンレベルで結合させたのが「接着」です。
 
 その接着強度は、象牙質そのものよりも強いため、「正確に接着できれば」、無理やり力をかけると歯の方が壊れてしまうほどです。また、ボンディング剤やレジンセメントは、唾液や酸にも溶けにくいため、お口の中で長期間安定して機能します。

 こう書くと、「接着治療」がいいに決まってるじゃん!って話になりそうですが、実は話はそう簡単ではありません。
「接着」は先ほど書いたように、歯の表面と歯の詰め物を、ミクロンレベルで結合させるため、その接着面、下地の精密な処理がとても重要になり、この処理ができなければ接着は成立しません。「正確に接着できれば・・」と前置きしたのはそのためです。

 虫歯の取り残しはもちろん、古いセメントなどが残っていると、正確な接着はできませんし、個人個人の歯の質によっても接着しにくい場合があります。
また、接着剤も多様なものが発売されていて、それぞれ取り扱いが違いますので、その特性を歯科医師が良く理解して使う必要があります。
取り扱いを誤ると、合着用セメント以下の性能しか発揮できない場合もあります。
 
 また、接着剤やレジンセメントは、非常に固く、また接着力が強いため、間違って歯のスキマなどに入ると取り除く事ができず、かえって歯周病の原因になったりすることもあるため、取り扱いには本当に注意が必要です。

 その点、合着は、取り扱いが簡単な分、そういうテクニカルエラーは起きにくく、保険診療として長い歴史に裏打ちされたメリットはやはりおおいにあると言えます。

 次回からは、いよいよ症例に入っていきたいと思います。
 当院が「メタルフリ―治療」として力を入れているのは、何度も書いていますが「ダイレクトボンディング」と「セラミックインレー」。
それぞれ、精密に「接着」をすることで高い性能を発揮する治療ですが、やはり長所、短所はあり、必要に応じて使い分けています。
それらの症例の中で接着前の下地の処理の話も少しご説明したいと思います。まずは「虫歯の除去」からです。









# by healthcarenews | 2019-03-23 21:34

「メタルフリー」へと続く道・Part6 歯を失う「治療修復のサイクル」からの脱出!

 今夜のヘルスケア通信は、「メタルフリー」へと続く道の第6夜 「治療修復のサイクル」からの脱出、についてです。

 今夜のテーマは、今回の一連の「メタルフリー」へと続く道、の話の中で最も重要なテーマのひとつになります。話はいよいよ佳境に入ってきました!

まずは次の図をご覧ください。
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 この図は、口腔衛生学会という学会で1995年に発表された「歯科修復物の使用年数に関する疫学的研究」と言う論文を基にして作られたものです。
 
 研究のデザインは、「健康な歯」が最初に治療を受けてから、平均して何年後かに再び虫歯になり(2次虫歯と言います)、その再治療をしてから、それがその数年後にさらに大きな虫歯になり・・・、と、その繰り返しをしているうちに最後に「抜歯」になるまでを、統計を取って平均値を出したものです。

 簡単に言うと、プラスチック充填、メタルインレー、そしてクラウン(かぶせ物)などを経て抜歯にいたるまでのそれぞれの治療が、平均して「どれぐらいもつか?」(平均寿命)を表しています。

 この統計によれば、もし単純にそれぞれの平均寿命を足していくと、最初に歯の治療をしてから約18年後には、その歯はダメになって抜かないといけない結果になります・・・(-_-;)。

 これは、実は恐ろしい研究結果で、もし20歳ぐらいの時に最初に治療を受けて、そこから生活習慣、食習慣、歯磨き習慣などに何の改善も行われなければ40歳前後には、その歯は抜歯になる!という事を意味します・・。

 まあ、25年前の研究結果ですので、予防歯科が発達し浸透した現代では、これとは少し事情が違っています。

 それぞれの治療の寿命は、その人の虫歯リスクや歯の場所によって全然違ってきますし、材料もこの25年で格段に良くなっています。
 僕の感覚では、歯が悪い人でも、プラスティックとメタルインレー、そしてクラウンと根管治療をそれぞれ2回くらい「やり直し」が入って、もうプラス10年くらい・・・、すなわち「抜歯」までには約30年ほどはかかる計算になると思います。

 それでも10代中ごろで治療を受け始めれば、40代中ごろには歯を抜いて、ブリッジか何かが入る計算になります。
 確かに、そういう目で見て行けば、30代40代で抜歯になっている患者様は、以前よりは少なくなったとは言え、まだまだ相当数いらっしゃいます。

 これが従来型の治療中心の歯科医療の「治療修復のサイクル」で、言わばこれは「いつかは歯を失う治療修復のサイクル」とも言えると思います。

 この「サイクル」からの脱出を目指して、定期的にメンテナンスを行う「予防歯科」の考えは画期的で、それはそれで大きな成果をあげました。
 しかし、初期虫歯や歯周病を防いだり、ひとつひとつの修復の寿命を延ばすことはできても、予防歯科では修復物の「2次虫歯」を完全には防ぐ事はできません。なぜなら、それは「歯磨き」の問題だけではなく、前に見てもらったメタルインレーのように「金属そのものの欠点」からも起こっているからです。

 マイクロスコープなどを使った「精密根管治療」は、従来の「手探りの根管治療」では、治療が上手くいかない場合があるため、これはこれでとても重要な治療です。
 しかし、神経を取った段階で、歯の寿命はある程度決まってしまうため、根管治療は「治療修復のサイクル」の終末期を、どれだけていねいに行い延命するかに集中している治療です。

 インプラントにいたっては、この「サイクル」が終わってしまった後を、お金と手間をかけてやっているに過ぎません。それでも他の歯を削らずに済むため、他の歯を「サイクル」から守る、という大きなメリットはあるのですが・・・。

  もちろん、予防歯科、精密根管治療、インプラント、それぞれがみんな大切な治療で、当院も力を入れているのですが、「予防歯科」が、「サイクル」の入り口の部分、「精密根管治療」が「サイクル」の最後の部分、「インプラント」が「サイクル」を出た後の部分にあたるのに対し、同じく大切な「サイクル」の中間部分の「プラスティック治療」や「メタルインレー治療」などの修復物の「寿命」には、意外とみんな無頓着で、おざなりにされてきたのが今までの現状です。

 ここを、ひとつひとつできるだけ精密なもの替え、その修復物の寿命を延ばすことにより、この「歯を失う治療修復のサイクル」から改めて脱出しようという試みが「メタルフリー」を目指すのひとつの大きな目的なのです。

 ただし、単に素材を「メタルフリ―」にしたら、歯の寿命が延ばせる、という簡単な話では実はありません。金属アレルギーは減らせるでしょうが、それだけでは歯の寿命は延びません。

 当院が、今、力を入れている「メタルフリ―」診療は、「ダイレクトボンディング」と「セラミックインレー」。
 どちらも、そこには「接着する」という行為が必要になります。しかも、「精密に虫歯を取って、精密に接着する」という行為です。
次回は、その「接着」についてお話をします。

 

 

 

# by healthcarenews | 2019-02-24 23:12

「メタルフリー」へと続く道・Part5 チタン、コバルトクロム、貴金属について

 今夜のヘルスケア通信は、「メタルフリー」へと続く道、の第5夜です。
 一連の「メタルフリー」の話は、とにもかくにも、まず歯科用金属の事を知ってもらう事から始まりますので、アマルガム、金銀パラジウム合金、銀合金、と紹介してきました。

 残る金属は、チタン合金、コバルトクロム合金、貴金属・・・。
 これらの金属は皆、今まで出てきた「保険診療で使われる金属」とは違い、「特殊」かつ、「他に替え難い」ケタ違いな性能を持つ一芸に秀でたスーパースターで、言わばイチロー選手か羽生結弦選手みたいな存在です(こんな表現していいのかなあ・・・(^^;)。
 すべて保険外診療で使われる金属ですが、「他に替え難い」ので、おそらくこれからもずっと使われます。欠点無し、とは言いませんが、メリットの方が大きく、「他に替え難い」ので「功罪を問う」のでなく、そのスーパースターぶりをチャチャっとまとめて紹介だけしておきましょう(笑)。

 1.チタン合金。
この金属が使われているのは、まず「インプラント」です。
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 それも、骨の中に埋まる、「人工歯根」と呼ばれるネジの方です。

 もともとチタンは骨に細胞的に「くっつく(結合する)」という性質を持っています。
また「生体親和性」と言って難しい言葉ですが、要するに「体に害が出にくい」「アレルギーも出にくい」性質を持った金属なのです。
 整形外科などで、骨折した骨をつなぐプレートやネジにはチタンが多く使われているのはそういう性質を利用したものです。
 そのため医学界では古くから使われてきましたが、そのチタンを、歯根の代わりに顎の骨に埋める事を思いついて、形状や長さ、太さなど現在のインプラントの基礎となる原型を作ったのがスウェーデンの整形外科医ブローネマルク博士なのです!!!

 「現代インプラントの父」と呼ばれるブローネマルク博士の事を語ると熱くなりますのでほどほどにしときますが(笑)、要は「チタン合金」無しにはインプラントは成り立たず、「チタン合金」無しには現代のインプラントがもたらした多くの福音も成り立たない事になります。(インプラントが与えるQOLのメリットは、実はインプラントを実際に入れた方しかわからないかもしれません。「カツラ」や「植毛」と同じように、多くの有名人が密かに入れていると思います。)

 余談ですが、最近では金属アレルギーの患者様対策としてインプラント本体も「ジルコニア」というセラミックで作られるようにもなってきていて、その意味では口の中の「メタルフリー」はインプラントでも可能と言えます。

 チタン合金は、もうひとつ、「入れ歯の金属フレーム」にも使われています。
チタンは比重が小さいため、「軽くて丈夫」というもうひとつの大きなメリットを持っています。
 入れ歯の金属フレームには「コバルトクロム合金」も良く使われますので、次にまとめてご紹介したいと思います。
 
 2.コバルトクロム合金
 コバルトクロム合金は、非常に硬く丈夫な合金です。
薄くても丈夫で簡単には変形しないため、歯科では「入れ歯の芯となる金属フレーム」に使われています。
 まずはどんなものか写真ですね。
 
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部分入れ歯と、
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 総入れ歯です。
 
 まあ、スマホやPCでこの記事をご覧になっているような年齢の方にはあまり縁が無くて興味がないかもしれませんが、上の写真は、一般に「金属床」とか「メタルプレート」とか呼ばれる金属フレームを持った入れ歯です。保険外診療となっています。

 いわゆる保険診療の入れ歯は、ほとんどがプラスチックで出来ています。これは一見、丈夫なように見えますが、歯の「噛む力」は意外と強力で、このプラスチックを簡単に「変形」させます。この「変形」が実は大問題で、一生懸命「正確」な型を取って精密に作っても、噛んだ時に「変形」してしまっては、結局余計なところが当たって痛みが出るのです。もともと「合っている」のですが、「変形」して「痛み」が出るのでそこは削らなければ痛みは止まらず、そこを削ると今度は噛んでないときにそこにスキマができて食べ物が入ります・・・(-_-;)。こうしていつまでたっても具合の悪い入れ歯ができていくのです。

 金属フレーム入れ歯(メタルプレート義歯)のメリットをまとめておきましょう。
1. 丈夫で剛性が高い金属フレームは、噛んだ時に入れ歯が変形せず、噛む力が安定し、痛みが出にくい入れ歯になる。
2. 剛性が高いため「薄く」作る事ができて、舌触りや違和感、異物感が少ない。
3. 剛性が高いため「薄く」作っても入れ歯が割れにくい。
4. プラスチックに比べ、温度を通しやすいため、熱い物、冷たい物が判り、食事が美味しく感じる。
5. 異物感が少なく丈夫なため、デザインの自由度が高い。
6. 丈夫で変形が少ないため義歯の動きが少なく、咬み合わせが安定し、その分残った歯を守ることができる。
7. 一度金属フレームを作っておくと、残った歯が抜けたりしても、そのフレームを修理することで非常に長く使う事ができる。
8. チタン合金と同じくコバルトクロム合金も生体親和性が高いため、アレルギーやその他の害が出にくい。

 さて、歯科用金属の紹介もいよいよ大詰めとなってきました、最後は3.「貴金属」です。
歯科で使われる貴金属は、ざっと分けて「金合金」と「白金(プラチナ)合金」です。
まずは金合金から。
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 上の写真、黄色矢印が「金合金」でできたいわゆる「ゴールドクラウン」。
ちなみに、赤矢印は当院で入れた「セラミックインレー」です。

 貴金属のメリットはなんといってもその「安定性と安全性」。
 貴金属は、その他の保険診療の金属が唾液で腐食して溶けるのに比べ、ほとんど唾液で溶けず腐食しません。また殺菌作用を有するのか、貴金属の周囲に汚れが付きにくいのも良く経験します。
 また技工操作がやりやすく精度を高く作る事ができるため、それらの事があいまって、治療したあとも歯の寿命を延ばすことができます。もちろん唾液に溶けにくく生体親和性が高いため、チタンやコバルトクロム合金と同じく金属アレルギーなどもゼロではありませんが少ないと報告されています。

 この高性能な「ゴールドクラウン」ですが、ただ現在では、ほとんどの患者様が自然に見える白い歯をご希望になりますので、使用する機会は減ってきています。
この写真の患者様も、この「ゴールドクラウン」を外して隣のセラミックインレーと同様の白い歯をご希望になっていますが、あまりに上手に入っていて外すのはもったいないので、もう少し様子を見て頂いている所です。

 最後に白金(プラチナ)合金です。
性質は金合金と同様ですが、強度と高温に耐えるようにデザインされた金属フレームにセラミックを焼き付けして、高強度のセラミッククラウン(メタルボンドセラミッククラウン)として使われています。

 下の写真は術前です。
黄色矢印の銀歯をセラミッククラウンに変更します。
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 術後です。
 黄色矢印の部分が「メタルボンドセラミッククラウン」です。
その左右の歯は「ダイレクトボンディング」で修復してあります。
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 メタルボンドセラミッククラウンは、ジルコニアなどのオールセラミッククラウンに比べ、強度が高く、歯を削る量が少なくて済む、というメリットがあります。
歯にかかる力が強い奥歯などは、メタルボンドセラミッククラウンを入れる場合も多くあります。

 歯ぐきとの境目に見えるラインはプラチナ合金のラインです。ただし、これは、お口の内側ですので絶対に人に見える事はありません。
クラウンを薄く仕上げ舌触りを良くしながら、かつ歯を削る量を減らすため、ここは金属フレームが見える構造になっています。

 チタン合金、コバルトクロム合金、貴金属については以上です。
次回からは、いよいよ「メタルフリ―」へと続く道、の本題に入っていきたいと思います。
 

 
  
 

 

 


 

# by healthcarenews | 2019-02-23 19:49 | 虫歯治療・MI治療

「メタルフリー」へと続く道・Part4 銀合金について

 今夜のヘルスケア通信は、「メタルフリー」へと続く道・Part4 銀合金について、です。
 歯科用金属の紹介も、「アマルガム」、「金銀パラジウム合金」、と来て、今回のテーマは「銀合金」です。

 銀合金の組成は、銀72%、インジウム12%、スズ9%、、亜鉛7%、などなどです。
 貴金属が含まれていないため、銀合金は金銀パラジウム合金より安価で、また柔らかく削りやすく、細工が楽ですので、主に「金属の土台(メタルコア)」として使われてきました。

 写真をご覧ください。
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 黄色矢印5本が金属のメタルコア(金属の土台)、赤矢印3本がまだ根管治療中の歯です。この治療が済んだら、根管治療で開いた穴の中に芯棒を入れ土台を作り、かぶせていきます。

 下の写真は、その後です。
治療中の前歯3本に、土台が入りました(2本のメタルコア、1本のプラスチックコア)。
 両奥歯の土台の部分は、白い歯(クラウン)でかぶせました。前歯の土台も、もちろんこの後クラウンでかぶせています。
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 主に、土台とクラウンの関係は、下のような感じになります。

神経を取る→芯棒を入れて土台を作る→周りを削って型を取る→クラウンでかぶせる。

 メタルコアは、もう何十年もの歴史がある、治療技術が確立した治療法です。
 また型を取って作るため、歯の場所や、歯科医師の技量に左右されない精度の高い治療法でしたし、一度に何本もの歯を治療するときは、いっぺんに土台が作れて便利な治療法でもありました。そして、金属を入れる事で歯を丈夫に補強できるとも考えられていました。
 ですので、「接着治療」が確立する前までは、このメタルコアが一番丈夫で良い治療法だと思われていました。

 しかし、金属である以上、メタルインレーと同じような欠点を持っています。
治療して年数が経った土台を外してみると、中のセメントが溶けて、こんな風になっています。
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 しかし、メタルコアには「セメントが溶ける」より、もっと怖い「結末」があります。
それは、メタルコアが歯より硬い材質でできているため、メタルコアの尖った部分が「くさび」の役目をして、噛んでいるうちに歯が割れてしまう事です。

 下のレントゲン写真をご覧下さい。メタルコアの部分、黄色矢印の部分で歯が割れています。
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 下のレントゲン写真もメタルコアですが・・・・、
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 赤矢印の歯は、歯が割れてメタルコアが取れてしまいました。黄色矢印の歯は、ヒビが入ってそこから感染し病巣ができています。
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以下も同様の症例です。
下の写真。いつも歯ぐきが腫れて不具合が続いていた前歯です。
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 レントゲンを撮ると、メタルコアと歯の間にスキマができています。
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 メタルコアが入っている歯ですが、隣の歯とつながっているの外れては来ませんでした。
外してみると・・・、割れています・・・。
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お口の中もご覧ください。
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外れてきたメタルコアです。
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 エンピツみたいに尖っている部分がメタルコアの先の部分です。ここが「硬いくさび」になって歯が割れてしまいます。

 歯が割れてしまった場合の治療法は、原則として抜歯になります。今回レントゲン写真で紹介した歯も、残念ながらすべて抜歯になっています。

 念のために書いておきますが、メタルコアの歯すべてが割れてしまう訳ではありません。
 ただ傾向としては、もうすでに「重症の虫歯だった歯」にメタルコアが入った場合、歯が割れる確率は高くなります。また噛む力が強い部分とか、歯の本数が少なくて、少ない歯に無理な力がかかる場合も要注意です。このような歯は、メタルコアで無くても割れる確率は高いのですが、メタルコアの方がより多く割れるのはたしかです。

 歯科医師側も、実はこのことは早くからわかってはいたのですが、メタルコアに代わる良い治療法がなかなか開発されなかったため、長い間、この欠点は解消されませんでした。

 しかし現在では、金属の芯棒の代わりにグラスファイバーの芯棒を使った「ファイバーコア」と呼ばれるプラスチックコアが開発されました。
 プラスチックと言っても最新のプラスチックは劇的に強度が上がり、歯と同程度の強さと硬さを持っています。それを「歯科用接着剤」を用いて歯と一体化させることで、さらに強度を上げることができます。またグラスファイバーの芯は柔軟性を持ち、メタルコアのように硬くないため、歯が割れるリスクを減らすことができます。

 この「ファイバーコア」は、開発された当初は保険が利かなかったため、高額でなかなか普及しませんでした。しかし、数年前から保険適用できるようになったため、現在、当院ではメタルコアはまったく使わなくなり、新しく根管治療をして作るコアは、ほぼ100%ファイバーコアを使うようになっています。
この点では、コアに関しては「メタルフリー」を達成した、と言えるでしょう。

 下の写真が「ファイバーコア」です。黄色矢印の先にある半透明の丸がグラスファイバーの芯の部分です。
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 ファイバーコアのメリットはこれだけではなく、例えばオールセラミッククラウンを入れる時など、土台に白いファイバーコアを入れておけば色調をキレイに出すことができます。
 
 このファイバーコアは、「接着治療」が高度に進化したおかげでやっと開発できた治療法です。
「接着治療」は、実は日本が常に世界をリードしてきました。折しも、先日、その「接着治療」をリードしてきた東京医科歯科大学の田上順次教授の講演を聞きに行ってきました。この30年余りの「接着治療」開発の経緯や実験データなどを見せて頂き、改めて「接着治療」への信頼を確かなものにしました。

 マイクロスコープや、歯科用CT、インプラント、そして「接着治療」など、最近の歯科治療の進化は、30年前の歯科治療を知る僕としては、もう「隔世の感」があります。
 昔、できなかった治療が、今は確かにできるようになっています。しかし、歯科治療の原則は変わらないと思います。
 どんなに技術が進歩しても、まずはそれに頼らないように、予防が第一。次に早期発見と、最小限の治療。そして精密な治療です。



# by healthcarenews | 2019-02-16 23:45 | 虫歯治療・MI治療

「メタルフリー」へと続く道・番外編 クラウン(かぶせ物)について

 今夜のヘルスケア通信は、「メタルフリー」へと続く道・番外編、クラウン(かぶせ物)についてです。
今回は、前回までのメタルインレーの記事に対しての補足版と思ってください。

 とりあえず写真です。
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 念のため、改めて説明を加えておきますが、黄色矢印の全部銀歯になっている歯が「クラウン」。
その隣(赤矢印)、一部歯が残って、一部銀歯になっている歯が「メタルインレー」です。

 メタルインレーは、前回、ある程度説明をさせてもらいましたが、歯の一部分に虫歯があったため、そこを削って型を取って、銀の詰め物をしたものです。
それに対し、クラウン(かぶせ物)は、歯の周囲を一層全部削って、全体をかぶせたものです。

 では、何故そういう治療をしたのか?おそらくここが一番大事な所だと思います。誰でも、大きな銀歯は入れたくないでしょうから・・・。
でもクラウンを入れるのはそれなりの大事な理由があるのです。

 「クラウン(かぶせ物)」でかぶせる場合、ごく一部の例外を除いて、ほとんどは神経を取った歯です。
神経を取った歯は、神経の部分に大穴が開いている上、もともとの虫歯の部分も大きく歯が削ってあるため、大なり小なり「もろく」なっていきます。そのため、歯の周囲を取り囲むようにしっかり包んでおかないと、噛んだ時に歯が割れてしまうのです。

 まだ、歯の上の方だけで割れた場合はましですが、時には根っこの方まで割れてしまう事があり、そういう場合は抜歯になることがあります。
それを避けるために、神経の穴(根管)に芯棒を入れ、丈夫な土台(コア)を作った上で、その周囲を一層削りすっぽりとかぶせる「クラウン」という治療法をやむなく選択しています。

 症例をご覧ください。
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 神経を取って、土台(コア)が作ってある歯です。
黄色矢印が金属でできた「メタルコア」。赤矢印がプラスチックでできた「レジンコア」です。

 下の写真は術後です。大臼歯2本は金属のクラウン、小臼歯2本はプラスチックのクラウンでかぶせました(下写真)。
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現在では、グラスファイバーの芯を入れた「ファイバーコア」というコアも出来ています(下写真黄色矢印)。
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 クラウンは「銀歯」とは限らず、セラミックを使った「セラミッククラウン」もあります(下写真)。
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  クラウンは、メタルインレーに比べると、セメントがカバーする部分も多く、また咬合力学的にも力のかかり方が安定しているため、多くはメタルインレーより長い寿命が期待されます。
 しかし、反面、メタルインレーより多くの歯を削ってある事と、神経が無く知覚が無い歯であるため、歯の治療としては最終段階まで来ており、「雑」に作られたり、歯磨きなどの管理が悪かったりすると、スキマから入った虫歯が、今度は見えない中の部分で知らないうちに大きくなって、クラウンの寿命が来た時には、もう抜歯になってしまう可能性も高くなります・・。言わば「両刃の剣」と言えるでしょう。
 
 もうひとつ、クラウンの寿命を決める大きな因子として、コア(土台)の問題があります。
クラウンの寿命は、このコア(土台)の治療法次第と言っても過言ではないくらい、現在ではコアは重要な役割を果たします。

 前にも出てきましたが、コアには、メタルコア、レジン(プラスチック)コア、ファイバーコア、などがあります。
次回のテーマは「クラウンの寿命を左右するコア」・・・。中でも、「銀合金」が使われている「メタルコア」がメインテーマとなります。
 
 
 
 

# by healthcarenews | 2019-02-13 23:11 | 虫歯治療・MI治療

「メタルフリー」へと続く道・Part3 金銀パラジウム合金について 後編

 今夜のヘルスケア通信は、「メタルフリー」へと続く道・Part3 金銀パラジウム合金について、の後編です。

 前編終盤で、歯と金属はあまりに性質が違いすぎるため、クラウンはともかく、メタルインレー(金属の詰め物)は、治療後数年も経つと明らかに劣化していく、と書きました。そして、これはメタルインレー治療の大きな欠点、と書きました。

 この「メタルフリー」へと続く道・Part3のテーマは、金銀パラジウム合金の欠点と言うよりは、実は「メタルインレー治療そのものの欠点」と言えます。

 メタルインレー治療は、虫歯を治療するためには、保険診療で出来て、丈夫で手軽で、とりあえず安価に虫歯を詰めるには非常に便利な治療法です。
 ですので、今でも普通に行われていますし、当院でも普通に行っています。
 でも、その裏には大きな欠点が潜んでいる事も知っておいて頂きたいと思います。今夜はまず、その検証からです・・・・。

 下の写真をご覧ください。
古いメタルインレー(金属の詰め物)ですが、歯との間にスキマが出来ています。
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 金属を外してみると・・・・、中でセメントが溶けてこんな風になっています。
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 メタルインレーの平均寿命は5.4年(口腔衛生学会データ)。上の写真のような症例は毎日のように見かけます。
 こうなる原因はいろいろですが、大きな根本的な原因のひとつが、歯と金属は性質が大きく違う、という事です。

 その性質とはなんでしょう?
ひとつはその硬さ。歯と金属は硬さが大きく違います。
 特に奥歯は咬む力が強いため、金属そのものは硬くて丈夫で長持ちしても、その周囲の歯が欠けて、ひび割れやスキマができてしまいます。

 もうひとつは熱膨張です。「熱膨張」ってむずかしい言葉ですが、要は熱い物、冷たい物を食べた時のミクロの目で見た時の変形のしかたが全然違うという事です。
 歯はほとんど冷熱の温度による変化がありませんので、詰めてある金属だけが、熱い物や冷たい食べ物により膨張と収縮を繰り返しているうちに、着けてあるセメントが溶けて、歯との間にスキマが出来てしまうのです。

 いずれにしても、そのスキマから、虫歯菌が入り、知らないうちに虫歯になってしまうのです。
 もう少し、写真を見ながらご説明しましょう。
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 上の写真は、メタルインレー(金属の詰め物)をして、長期間経っている歯です。
 ひとつは貴金属の「金」、ひとつは金銀パラジウム合金が入っています。
 よく見ると、どちらも歯から浮き上がってしまっています(黄色矢印)。金銀パラジウム合金の方は硬いのでヒビまで入っています(赤色矢印)。
 角度を変えて見ましょう。
下の写真。スキマが開いて(黄色矢印)ヒビが入っています(赤矢印)。その下は黒く変色し、虫歯になっています。
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 次の症例です。下の写真は、一見、何の異常も無いように見えますが、「時々、違和感がある」歯です。歯科治療をしていて、「時々、違和感がある」って言う訴えは、診断に苦しむことが多々あります。
 そしてメタルインレーはレントゲンを通さないため、ますます虫歯の診断を難しくします。
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 下の写真、大きい歯の方の銀歯を1本外してみると、これだけ虫歯ができかけています。
 セメントが溶けたスキマから虫歯が感染したのです。
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 別の症例をご紹介しましょう。
メタルインレー(金属の詰め物)がポロリと外れてきました。自分から取れてくるインレーは要注意です・・・(-_-;)。
詰め物の裏側は真っ黒になっています。
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 歯の方はと言うと・・・・、もうこれだけ深い虫歯になっています(下写真)。
 でも、外れるまで何の痛みもありませんでした・・・。
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 同様の症例をもうひとつ・・・。
下の写真、ポロリとメタルインレーが取れてきました。やはり症状はありませんでした・・。
黄色矢印部分が黒くなっています。
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歯の中は、と言うと・・・。
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こんな状態です。
試しに一度、元の歯に戻してみると・・・・、
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スキマが開いたり、歯が欠けているのが判ります(黄色矢印部分)。

 最初にも書いたように、もう、このような症例は、毎日毎日見ています。
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銀歯を外すと・・・、
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こうなっています・・・。

コレも・・・。
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コレも・・・。
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メタルインレーがポロリと外れてきた後の歯の写真です・・・。

 メタルインレー・・・・金属の詰め物の本当に怖い所、本当の欠点は、実はココなのです。
欠点をまとめてみましょう。

1. メタルインレーと歯は性質が違いすぎるため、治療数年後にはスキマやヒビ割れが開く事が多い。
2. 開いたスキマからセメントが溶けて虫歯が入り、気が付かないうちに虫歯が進行する。
3. インレーの2次虫歯の症状は、「違和感」程度で痛みが出にくいため気付くのが遅れる事がある。
4. メタルインレーはレントゲンを通さないため、初期は診断が難しい。
5. インレーが取れてきた時には大きな虫歯になっている事がある。

 治療をしても、また悪くなる・・・。削ったら、またまた虫歯になって、そのうち神経も取って、また虫歯になって結局いずれ歯も抜いて・・・。
かつて、それが「当たり前」の時代がありました。
 治しても、治しても、すぐまた虫歯になって患者さんが「痛い」と戻ってくる。虫歯の予防法もわからず、歯磨きすらまともにしてくれない時代・・・。
メタルインレーは、そんな時代に開発された、虫歯を簡単に治療して「噛むことができる」ようにする、当時としては当たり前の「良い治療」でした。
 その治療が「また悪くなる事」は当たり前でしたので「欠点」ではありませんでした。

 アマルガムのように「環境汚染」の問題もありませんので、メタルインレー治療は小さな虫歯治療なら、今でもコンポジットレジン(プラスティック)治療と並ぶ有力な治療の選択肢です。

 しかし、現代では虫歯の予防法も発達し、昔のように次々と虫歯になることは無くなりました。
 また、治療法も材料も高度に発達しましたので、現在では、接着治療など、治療法と材料を選ぶことにより(もちろん予防が大前提ですが・・)、より長期間、歯の寿命を延ばすことができるようになりました。

 当院では、現在メタルインレーの治療でも、虫歯の深い所や削った部分の内面を、接着剤やコンポジットレジン(プラスティック)を使ってカバーし、2次虫歯になりにくいように配慮しています。また、それをすることで、術後、冷たいものがしみたりする事も減らすことができます。

 しかし、それでも、金属そのものの欠点は、完全には解消できません。
そこで、次なるステップアップとして出てくる治療法が「メタルフリー」、金属を使わない治療なのです。

 金銀パラジウム合金とメタルインレーの話はここまでにしておきます。次回は、番外編として、「クラウン」・かぶせ物の話をします。

 最後にメタルインレーの「メタルフリー」修復症例を挙げておきます。
大きなメタルインレーを除去し、「メタルフリー」修復をする場合、当院では多くは「ダイレクトボンディング」か「セラミックインレー」を用います。
 この症例では、セラミックインレーを用いています。
ダイレクトボンディングとセラミックインレーについては、また近々改めてご紹介したいと思います。

 患者様は38歳、女性。
術前です。
大臼歯に2本、メタルインレーが入っています。
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術後です。
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 大臼歯2本をセラミックインレーで修復しました。
 セラミッククラウンではありませんので、一部分に自分の歯が残っているのですが、どこまでがセラミックで、どこまでが自分の歯か判別が付かないのがわかって頂けると思います。隣の小臼歯の古いセラミックインレーと比較してみて下さい。
 現在の「接着技術」はここまで来ています。境い目と段差が無い接着技術が虫歯菌の侵入を防ぎます。 









# by healthcarenews | 2019-02-06 00:32 | 虫歯治療・MI治療

「メタルフリー」へと続く道・Part3 金銀パラジウム合金について 前編

 今夜のヘルスケア通信は、「メタルフリー」へと続く道、の第3夜、金銀パラジウム合金についてです。

「金銀パラジウム合金」とはどんな金属か?と、いうと、今の日本で、保険診療の銀歯、メタルインレー(金属の詰め物)やクラウン(かぶせ物)に使われている金属、そのほぼ「すべて」という事ができます。

 ちなみに、メタルインレー(金属の詰め物)とは、歯の一部分を削って、型を取って、それからできた金属をセメントで歯に着ける治療です。
 クラウン(かぶせ物)とは、歯の全部を削って、型を取って、全体をすっぽりかぶせるように包んだ金属をセメントで歯に付ける着ける治療です。

 下の写真のコレ(黄色矢印)や隣の歯の銀歯がメタルインレーで、材料は金銀パラジウム合金・・・、
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また、下の写真の黄色矢印もめメタルインレーで、その隣の歯がクラウンです。そして材料は金銀パラジウム合金・・・。
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下の写真の3つの黄色矢印も・・・、
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みーんな金銀パラジウム合金です。

 一部、入れ歯や土台に、違う種類の金属を用いる事はありますが、歯科用で保険で使われる金属のほとんどが、おそらくこの「金銀パラジウム合金」だと思います。

 その金属としての組成は国が決めていて、金12% パラジウム20% 銀50% 銅16%、その他の金属2%、まあ大体こんなところです。

 では、金銀パラジウム合金に害(毒性)はあるのか?と問われると、国が「保険診療にはこの金属を使いなさい!」と決めてしまっていますので、僕個人としては何もそれに反論する事もできませんし、害を実証する、いわゆるエビデンス(根拠)のある論文を持っている訳でもありません。まあルールですので、使わざるを得ない、と言うところが本音にになります。

 ただ、貴金属としての「金」は、昔から金箔としてお酒に入れて飲む人もいるくらいですから、まあ多くの害は無いのでしょうが、残り88%のパラジウム、銀、銅や、その他の金属が、金属それぞれの性質を調べた時に、「大丈夫かどうか?」というのが問題で、少なくとも金属アレルギーの原因になるのはあり得るのかなあ、と言うところです。
 しかし、確かに、金属アレルギーの患者様で、金属を除去することで症状が改善したということは良く経験することですが、たくさん他にも金属が入っているのに、一部の金属を除去するだけで症状が改善する場合もあり、すべてが金銀パラジウム合金のせいでは無い、ということも経験しています。

いわゆる保険外診療で、メタルフリー治療(ノンメタル治療)を専門でやっている医院のサイトを見てみますと、かなり怖いことがいろいろ書いてあります。

いわく、金銀パラジウム合金は、お口の中でアンテナとして働いて、電磁波を集めて、電磁波過敏症を招く。

いわく、唾液で溶けてガルバニ電流を発生し、疲れやすい、めまい、動悸、頭痛、腰痛、肩、首のコリ、ひじ、ひざの痛み、などを起こす・・・などなど。

また、できるだけ早く、「お口の中から金銀パラジウム合金を外す必要があります。」とまで書いてあります・・・(-_-;)。

 Part1にも書きましたが、金属は金属の素晴らしい長所があり、また、保険診療としての長い歴史の中で、膨大な数の金属が患者様のお口の中に入っていますので、この「金銀パラジウム合金をすべて外す」あるいは「使わない」治療を、まともに実践すれば、歯科治療としての根本である、「虫歯を治療して痛くなく噛めるようにする」、という行為が、保険診療ではまったくできなくなってしまい、これはこれで本末転倒、という感じがします・・・(汗)。

 ですから、この金銀パラジウム合金の「毒性」という問題に関しては、ここはちょっと横に置いておきましょう。
アマルガムと違い、100%悪者ではありませんし、安価で手軽に丈夫に治療ができる材料には違いありません。
 僕も、今でも必要に応じて普通に使っていますし、特に強い噛む力がかかる奥歯のクラウン(かぶせ物)などにはどうしても必要な材料になります。

 ただ、「金属の使用量を減らす、あるいはより良い材料を使う」というスタンスは、これからは「アリ」だと思います。
いまは、それに代わる良い材料も出てきています。

 ここからは、また後編に持ち越しましょう。
後編のテーマは、やはり接着性。
歯と金属はあまりに性質が違いすぎるため、クラウン(かぶせ物)はともかく、メタルインレー(金属の詰め物)は、治療後数年も経つと明らかに劣化していきます。
 金銀パラジウム合金は、その合金そのものの毒性よりは、金属としてのその他の性質の方が大きな問題になります。
これは、特に「メタルインレー」治療の大きな欠点であり、そして「貴方の歯と体の健康を守る」ためにとても重要なテーマとなります。
 

 





# by healthcarenews | 2019-01-30 22:40 | 虫歯治療・MI治療

「メタルフリー」へと続く道・Part2 アマルガム合金について・後編

 今夜のヘルスケア通信は、メタルフリーへと続く道・Part2 アマルガム合金について、の後編です。
前編の後半部分で、アマルガム合金の欠点について触れました。

 簡単に復習しておきますと、アマルガム合金の欠点とは

1. 金属に「水銀」が使われていて「毒性」があること。
2. 劣化して溶けだし、黒色になり、周囲の歯も黒く変色することがあり、審美的にキレイでないこと。
3. アマルガムは歯に接着しないため周囲にスキマが開いて、知らないうちに虫歯になったり歯が割れたりすること・・・などなどです。

 後編のテーマは、この欠点2と欠点3。
両者は、アマルガムの金属としての性質そのものを原因としていますので、まとめて見ていきたいと思います。
 
 まずは写真をご覧ください。
下の写真は「メタルフリーへと続く道・Part1」でも使った写真ですが、奥歯が明らかに変色し、大きく審美性を損ねています。そして、後に紹介しますが、この歯は想像以上に重症で、最悪の結末を迎えます。
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 下の写真、黄色矢印は、とても小さいアマルガム治療ですが、黒変し逆に虫歯のように見えてしまっています。
その間の小臼歯は何十年も虫歯になっておらず、虫歯リスクの考えから見ると、このアマルガム治療も本当に必要だったのか疑問が残るところです。
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 下の写真、黄色矢印部分。
アマルガムは接着性が無いため、長期使用で劣化してスキマができたり、歯にヒビが入ったり割れたりすることがあります。
接着性とは、歯科材料が歯そのものくっつく性質で、接着性があると、歯を補強する場合があります。
接着性が無いと、スキマやヒビができやすくなり、そスキマやヒビの部分から中に細菌が入るため、中で虫歯が進行します(2次虫歯と言います)。
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 下の写真の歯も同様です。
前歯の裏側ですが、ヒビやスキマが入り、中で2次虫歯が進んでいます。
b0119466_23193555.jpg
 さて、下の写真は最初に出てきた症例ですが、そのアマルガムを除去した時のマイクロスコープ画像です。
2次虫歯の部分を取り除いたのですが、矢印部分にヒビが入っています。
b0119466_00541302.jpg
 ヒビからの感染は神経にまで進んでいましたので、やむを得ず神経を取りました。
4本も神経がある歯でしたが、大きく黒いヒビが入っています(黄色矢印)。
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 最も問題なのはこのヒビで、これだけ大きなヒビが入った奥歯は、正直言って予後がまったく予測できず、治療後すぐに割れてしまう可能性もあります。
そうなるとこの歯は抜歯になりますので、もっと早く治療ができなかったか悔やまれるところです。
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 別の症例も見てみましょう。
同じく古いアマルガム治療のマイクロスコープ画像です。
お約束のように、アマルガムの「劣化」「ヒビ」「中の2次虫歯」が出来ています。
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 アマルガムを除去したあとの画像です。
一部ですが、中で深い虫歯になっています。ヒビも入っています(黄色矢印)。
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 この症例も大きなヒビが入っていましたが(下写真、黄色矢印)、幸い神経までは入っていなかったため、詰めなおすだけで治療は終了しました。
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 誤解が無いよう書き添えておきますが、「ヒビ」の問題は、アマルガムだけの問題ではありません。
最近は、ストレス社会のせいか、食いしばりや歯ぎしりで、健康な歯を噛み割ってくる方が増えています。
特に、マイクロスコープなどで覗いていると、問題がある歯の多くの症例に「ヒビ」を発見します。
これはまたどこかで改めて話をしたいと思います。

 さて、最後に、わりと簡単なケースのアマルガム治療の再治療の例を紹介したいと思います。
 下の写真、やはり奥歯の古いアマルガム治療。
「劣化」はありますが、まだ初期で、幸い中の「ひどい2次虫歯」と「ヒビ」はありません。
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下の写真は、アマルガム合金除去後です。虫歯はありませんが、それでもこれだけ変色しています。
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 接着性材料のプラスティック(コンポジットレジン)で修復しました。(下写真)
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 現在では、ていねいにやると、ここまで審美性と歯の形を回復する事ができます。
術前と比べて見たら、やっぱりこっちの方がいいのは、皆さん明白だと思います・・・。

 さて、今回始めた『「メタルフリー」への道』・・・、その「最初の第一歩」がアマルガム合金の除去です。
わざわざ、『「メタルフリー」への道』、と、仰々しいタイトルをつけたのは、それが実は思いのほか、遠い遠い大変な道のりだからです・・(-_-;)。

 「Part1、歯科用金属の功罪」、でも述べたように、金属にも「強度」という大きなメリットがあり、また過去からの保険診療の流れで、お口の中全体に金属が入っている患者様もいらっしゃっいますので、そのすべてをいきなり外してメタルフリーにすることは、時間的にも費用的にも性能的にも到底不可能です。
また、小さな詰め物は保険診療でも大丈夫ですが、大きな虫歯の詰め物は保険外診療になる可能性が高いのも、道のりを遠くする大きな問題です。

 次回は金銀パラジウム合金の話になりますが、これにくらべると、小さなアマルガム治療なら、多くは保険でプラスティックに替える事ができますので、アマルガムのマイナス面を考えると、手軽でコストパフォーマンスの高い治療になります。
 それでも、このアマルガム治療が、現在どれくらいの量、患者様皆様のお口の中に眠っているのか想像もつきません。
それだけ長い長い歴史がある治療なのです。

 アマルガムの除去は「メタルフリー」への第一歩!
少しずつやっていきたいと思います。

 

 






# by healthcarenews | 2019-01-23 16:16 | 虫歯治療・MI治療

貴方の健康の舵取りを。堺市北区中長尾町、山本歯科医院の歯科に関する情報のページです。


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