総入れ歯のインプラント
患者様は中学校の時に重症の顎炎を起こし、左上の上顎の骨を大きく失いました。
その後入れ歯を入れましたが、顎の土台が少ないため安定せず、また歯ぎしりや、くいしばりの癖があったため、次々と、その周囲の歯を失うことになりました。
初診時には、ぐらぐらの右上の歯に針金をかけて、ぎりぎりもたせている状態でした。
左上にはほとんど骨が無く、唇を結んでできる水平線に比べると、顎の骨の土手は、左上に大きく退縮して斜めになっています。その上の斜めに合わせて下の治療を行ったらしく、下の歯も斜めに傾いた修復が行われていました。
このままでは、何度義歯を造り替えても、噛みあわせの力が斜めにかかるため、左上の痛みが取れません。無理な咬合は、結局右上の歯を痛め、抜ける寸前の状態に至ったのでした。このままでは、いつ上の歯が抜けてまったく噛めなくなるか判らない状態でした。(事実、初期治療の途中でポロリと抜けました。)
大慌てで、下の治療をやり直し、左右両側に仮歯を入れて、かみ合わせの水平線を合わせました。
上は術後の写真です。
上顎には、前歯の部分しか骨が残っていなかったため、そのわずかな部分を狙ってインプラントを埋入しました。そのインプラントに磁石をつけ、最終的に総入れ歯の吸着の助けにしました。
はたして、「中学以来ずっと、苦労してきたのに、今はなんでも食べられます。」と喜んでいただきました。但し、ここまでの道のりは正直、簡単ではありませんでした。
まずは自分の歯があるうちに大事にする。
この基本を改めて認識させられる症例でした。