「咬合病」予防の一手・マウスピース
ただ、少し誤解を招いているといけないので、もう少し整理をしたいと思います。
まず、実は「咬合病」と呼ばれる病気の定義はまだ確立していません。咬合が原因、あるいは咬合が関与すると思われる体に起こる様々な障害を、便宜的に「咬合病」と呼んでいる・・・程度に解釈しておいて下さい。
まあこちらも参考程度にご覧下さい。
ですから、その病態は実に多彩で、前回、前々回の歯を噛み割ったケースもその一部に過ぎません。
また、トゥースウェアと呼ばれる、歯の障害も、この一部です。
歯ぎしりや食いしばり、噛みぐせや、噛み合わせの不調和などが原因で、歯や口腔の周囲組織に無理な力がかかると、歯が欠けたり、割れたり、磨り減ったり。また歯の根が折れたりします。ブリッジが入っていれば、金属を噛み折ることもありますし、入れ歯なんか簡単に噛み割ってしまいます。歯周病があれば、無理な力が組織の免疫を落としますので、歯周病が進行します。
強い力で噛むため、筋肉は緊張し、肩こりや頭痛の原因なります。噛み合わせの不調和は、姿勢を崩し、腰痛の原因になったりします。
咬合病から起こる障害は、原因の特定や解決が難しいため、様々な不定愁訴の原因になり、精神神経的にもダメージを与えていくこともあります。また、逆に、精神神経的なダメージが、「咬合病」となって、
不定愁訴を引き起こすこともあります・・・・・あーしんど。一服しましょう。
まあ、という訳で、当院では「咬合病」に対し、慎重かつ真剣に対策を考えています。
そのひとつが「マウスピース」です。
歯の型を採って、プレートを作ります。
歯ぎしりや、食いしばりの時に歯にかかる力を逃がしたり、顎関節症の治療に使ったりします。
症例によって、ハードタイプ、ソフトタイプ、厚いもの、薄いものを使い分けます。保険診療でできますが、3割負担なら5000円程度かかります。
ただし、結果のほどは、大きく個人差があります。
劇的に、頭痛や肩こりが治り、手放せばくなった人もいれば、違和感になじめず、どうしても入れておくことができない人もいます。2番目のケースのように、明らかに咬合病の素因を持ち、マウスピースまで作っておきながら、いつ起こるかわからない破壊のために使い続けることができず、破壊を招くこともあります。
当院としても、咬合病の素因のある方には、できるだけお知らせをしています。しかし、実際に障害が生じないうちは、なかなか、これといって有効な対策ができないのが現実です。
できることは、やはり素因のある方は、メンテナンスをしながら、注意深く経過観察をすることだと思っています。そうすれば被害を早く発見することもできますし、なにより、患者様本人が知っておくことで、不安を和らげたり、無意識の食いしばりを緩和することもできるからです。