ヘルスケア通信

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当院の根管治療技術の総力をあげて戦った難治根管治療症例について・・・

 今夜のヘルスケア通信は、久々の「マイクロスコープ・根管治療」ネタです。
マイクロスコープを導入して早や5年・・・、その取扱いにもかなり習熟し、システムも安定して、幸か不幸か、日々多数の根管治療の難治症例に取り組んでいる今日この頃であります・・・。
 その中でも昨年、僕の根管治療技術の総力をあげて、約10か月をかけて、なんとか治癒にこぎつけた症例に出会いました・・・。おそらくマイクロスコープが無かったら絶対に治療できなかった症例です。
 マイクロスコープがあれば必ず上手な治療ができる訳ではないのですが、マイクロスコープが無いと絶対にできない治療はあります。
 今夜はそんな症例を・・・、題して「当院の根管治療技術の総力をあげて戦った難治根管治療症例について・・・」。

 患者様は50歳、女性、2017年10月の初診です。
初診時、「左上大臼歯」と「右下大臼歯」に同時に重大な問題を抱えていました。
どちらも、過去に同じ歯科医院で治療したものです。
今回、他の医院で、この歯の抜歯を勧められ、当院を受診なさいました。

 まずは治療前のレントゲン写真をご覧ください。
まずは「左上大臼歯」です(下写真)。黄色丸の中に黒い影があります。
ここに膿が溜まり、腫れて、強く痛みます。
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 右下です。
「右下大臼歯」も同様に、黄色丸の中の黒い影の部分に膿が溜まっていて、腫れて痛みます。
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左右の歯が両方とも痛むので、噛むことができず、強いストレスを抱えておられました。

 とりあえず応急的に消炎処置を行い痛みを止め、3D-CTレントゲンを撮影後、根管治療にとりかかりました。

 まずは「左上大臼歯」、術前のマイクロスコープ画像です。
かぶせ物と土台を外し、感染予防のための隔壁を作った段階の写真です。
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この時点では、実は痛みの原因は何もわかりません。

 さらにマイクロスコープ拡大下で掘り進んで行くと・・・、
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中から、ドクドクと白い膿が出てくるようになりました・・・。
これでは痛くて当たり前です。

 さらに拡大して、中を覗くと・・・・、ん?!、痛みの原因にひとつたどり着きました。中でドリルが折れていたのです。
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赤い矢印が、中から出てきている「膿」です。
黄色い矢印の先の、グレーの四角形のものが折れているドリルの頭の部分です。
青い矢印は、歯の中にできている、固い「コブ」です。

 前医はこの「コブ」に邪魔されて、根管の中に正確にアクセスすることが出来ず、ドリルを折ってしまい、それで諦めて治療を不完全な状態で終えてしまった結果の痛みだろう・・・、と、この時点ではそう推察していました・・・。
 まあ、とりあえず折れたドリルを取りのぞき、邪魔な「コブ」を削り取ります。
この「コブ」を削る作業が「手探り」では、どこを削っていいのかがわからず、とても怖い作業なのです・・・。ここはマイクロスコープ下で直接見て削ります。
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 上の写真は「折れたドリル」も「コブ」も無くなって、「膿」も止まって、なんとなく「スッキリ」した根管内のマイクロ画像です。通常、上顎の大臼歯には、根管と呼ばれる神経の穴が3~4本開いているのですが、その穴も3本キレイに見えています。
 さあ、これで治るだろう、と、思ったのですが・・・、ところが!実はここからが思いのほか、さらに難しい治療になっていくのです・・・(-_-;)。

 当院には、根管が正しい位置に開かれているかどうか、電気的に検査する器械があるのですが、それで測定すると、2本の根管から「ピーッ」とエラー表示が出ます。
「?????」目で見ると、どう見ても正しく開いているように見えるのですが、検査結果は「エラー」が出るのです・・・。
そこを触るとそこからは出血が・・・・、どうやらまだ、重大な「何か」のトラブルが隠れているようです・・・。

 でも、とりあえず痛みは止まったので、ここからは「右下大臼歯」の治療にもとりかかる事にしました・・・。
麻酔をして、かぶせを外して、土台も外します・・・。一行で終わりましたが、この「土台を外す」と言う治療が、実を言うと根管治療では、大変な神経を使う作業なのですが、ここはあっさりとまたの機会に譲って割愛しておきましょう。
 
 下は、土台を外した状態の、根管内のマイクロ画像です。
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 またもや「コブ」(黄色矢印)です(^^;。何かの呪いか・・・・!
3か所の赤い矢印の白いセメント部分は、前医が治療した根管の跡ですが、「コブ」を取り除かないまま治療していますので、嫌な予感がします・・・。

 やはりマイクロ下で「コブ」を除去したのが下の写真です。
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 3本の根管がキレイに見えて「スッキリ」した画像になりました・・・、が、案の定1本の根管から「ピーッ」とエラー表示が出て、そこからは出血が・・・。
「オー、マイガーッ! こりゃあ難しいぜよおお!」こじれにこじれた根管です。簡単には治らない訳です・・・。

 ブログ上では、あっと言う間にここまで来ましたが、実際には、数回分のアポイント、何時間もの時間を費やしてここまで来ています・・・。
幸い、痛みは止まっているのと、患者様も協力的で、治療に理解を示して下さいましたので、ここからもゆっくりと時間をかける事ができました。

 先ほどから問題になっている「ピーッ」というエラー表示は、説明を加えておきますと、「パーフォレーション」と言って、「根管が正しくない位置に開いている」、簡単に言うと、「開いてはダメな所に穴が開いている」事を示しています(-_-;)。正直、歯としてはもうダメダメの状態です。従来なら、このような歯の多くは抜歯を余儀なくされていました。

 現在では、このような穴(パーフォレーション)をふさぐための良い治療法が開発されています。しかし、この穴をふさぐだけでは、もともとの根管治療は完了しません、どこかに正しい根管があるはずです・・・。
 さらに時間をかけて、CT像とにらめっこしながらマイクロスコープで探索します・・・。

 見つけました。
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エラー表示の穴のちょっと外側に、もう1本の根管がありました。
そこを、もう少し時間をかけて、ていねいに拡大していきます。
どうやら、「右下大臼歯」の本当の姿が見えてきました。
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 上の写真は、根管治療のための根管の拡大終了後の画像です。
赤い矢印2本が本来の正しい根管、黄色い矢印が本来開いてはいけないパーフォレーションの穴でした。穴の中には歯ぐきが見えてます。

 この歯の治癒のためには、この穴(パーフォレーション)を絶対に塞がなければいけません。
従来ではそれは大変難しい治療でしたが、現在ではパーフォレーションの治療のために「MTAセメント」と呼ばれる画期的なセメントが開発されています。
やや高価ですが、このセメントは、ここ最近の歯科薬品では、多くの患者様に恩恵をもたらす素晴らしい製品のひとつだと思っています。

 さて、下の画像はそのMTAセメント充填直前の写真です。
「穿孔」と書かれている黄色い矢印の部分がパーフォレーションの穴です。中から少し出血しています。
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ラバーダムと呼ばれる、感染防止用のゴムの膜を歯の周囲に張って、マイクロスコープ拡大下で、ピンポイントでセメントを充填します。

 下の画像は術後写真です。
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赤い矢印が正しい根管、黄色い矢印の部分がMTAセメントを充填した部分です。
ここまで来れば、あとは普通の根管治療です。
いつも通りに根管を消毒して、根管充填をしてこの歯の根管治療を終了しました。

 下は術後レントゲンです。
術前に有った黒い影がきれいに無くなっています。良かったあ(^^;。
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 「右下大臼歯」の治療で、今回、大体何が起こっているかがわかりましたので、今度は改めて「左上大臼歯」の治療に取りかかります。
CTとにらめっこしながらマイクロスコープで正しい根管を探索します・・・。
上の歯は、なかなか難しかったのですが、慎重に探していった結果、まず1本を見つけました。
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 赤い矢印が「ピーッ」っとエラー表示が出た穿孔(パーフォレーション)した穴の部分、黄色い矢印の部分が正しい根管の位置です。こう見ると、かなり離れています(-_-;)。初診時に開けた部分からでは想像もできない場所に正しい根管があった訳です。これでは「手探り」の治療では、正確な治療は無理であったろうと思われます・・・。

 「左上大臼歯」には、エラー根管が2本ありましたので、とりあえずもう1本も探して見つけます。
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赤い矢印がエラー表示の穿孔(パーフォレーション)部分。黄色い矢印の部分が正しい根管です。
「左上大臼歯」には2か所もパーフォレーションが起きていたのです。

 治療法はもう一択、「MTAセメント」しかありません。
下の画像は、MTAセメント充填直前の写真。やはりラバーダム防湿下、マイクロスコープ下での治療になりました。
3本の赤い矢印の部分が正しい根管、黄色い矢印の部分がエラー根管です。
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 下の画像はMTAセメント充填後です。
MB根、DB根、P根と書いてあるところが正しい根管です。
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 ここまで来ればあとは「右下大臼歯」と同じで、いつも通りの根管治療の後、根管充填を行います。
下は術後レントゲン写真です。
まだ完全とは言えませんが、やはり術前に有った黒い影が消えてきています。もちろん、痛みも腫れももうありません。
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これで、右下大臼歯、左上大臼歯2本の根管治療が終了しました(^^;。めでたしめでたし。

 さて、根管治療終了後、念のため仮歯を入れて数か月経過を観察しましたが、特に異常が見られなかったため、
2018年8月末、両方の歯にメタルボンドセラミッククラウンを装着し、定期的なメンテナンスに移行しました。

 最後に術前、術後のそれぞれの口腔内写真です。
まず左上大臼歯、術前です。黒く見える銀歯が問題の歯です。
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術後です。
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右下大臼歯、術前です。やはり銀歯が問題の歯です。
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術後です。
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 根管治療とマイクロスコープのネタを扱うとき、いつも書くのですが、マイクロスコープがあれば、いつもこんな治療ができる訳ではありません。
その点だけは、くどいようですがご了承しておいて下さい。今回は、ただ「奇跡的に」偶然治っただけかもしれませんし、数年後、あるいはもっと早く数か月後にも、また炎症を再発し、抜歯することになるかもしれません。根管治療を、自費診療(保険外診療)のみで診療する「根管治療専門医」ですら、難治性の根管治療の場合、その成功率は50~60%と言われています。
 もし大きなひび割れが入っている歯なら、治療成功率はもっと低く、多くは早期に抜歯に至っているのが実情です。
ただ、誰でも抜かないで済むものなら抜歯をしたくないのが人情です。僕はこの部分の「納得」のお手伝いがしたいと思って、必要に応じてのみマイクロスコープを使っています。難治性の根管治療に悩む方に、「良いご縁」となれば幸いです。
 












by healthcarenews | 2018-10-12 23:40 | マイクロスコープ・根管治療

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