ヘルスケア通信

newshealth.exblog.jp ブログトップ | ログイン

重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2

 今夜のヘルスケア通信は、「重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例 」の第2弾です。
第1弾「重症の虫歯に対して~」のネタは2014年12月のアップなのですが、何故か今でも検索率がとても高い記事です。

 今回は、この第1弾をご覧になって当院を受診された患者様です。
タイトルは、「重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2」。

 サブタイトルは、やはり「重症の虫歯(全顎にわたる歯冠崩壊)に対して、歯周外科のひとつである、歯冠長延長術(クラウンレングスニングス)を用いて治療を行った一症例」。しかし今回は、歯冠長延長術だけでなく、歯牙再植やMTAセメント充填、歯根端切除術など様々な治療が必要になりました。
治療期間はちょうど丸1年、4シーズンを要しました。ですのでタイトルもシーズン2(^^;。

 患者様は初診時41歳、男性。初診は2017年9月です。
まずは初診時の正面写真をご覧ください。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23394588.jpg
下は全体像の写真です。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23421004.jpg
全体のレントゲン像です。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23545843.jpg
 第1弾と比べても、年齢の分だけ重症度が上がっています。そのため今回は抜歯する本数も多く、最終的に治療には義歯が必要になりました。

 まずは、ホープレス歯(歯を残すことが絶対に不可能な歯)を抜歯していきます。
同時に、残せる歯はきちんと根管治療を行っていきます。この根管治療、臨床成績を上げるためにはなかなか手間がかかって、多数の歯をいっぺんに、という訳にはいかず、2本ずつくらいきちんと手順を踏んで、コツコツとやっていく事になります。

 その中でも、1本、「本来なら抜歯になる歯」ですが、その後の治療計画上どうしても抜きたくない歯が1本ありました。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_22354430.jpg
 上の写真、黄色矢印、上顎左側の糸切り歯(犬歯)なのですが、大きな虫歯で歯肉の中に根っこが埋まっています。
 歯肉の中に歯が埋まっていると、根管治療のための感染防御ができず、治療の方法がありません。そのため、多くの場合このような歯は抜歯の適応になるのですが、今回の場合、その奥の小臼歯の状態が非常に悪く、この犬歯が無かったら左側の咬合を支えきれないため、どうしても抜きたくはありませんでした。
 そのため、一度抜歯して、歯肉の浅い位置に植えなおしをする、という「歯牙再植」と言う治療を行ってみることにしました。
 もちろん、一度抜くわけですから必ず成功するという保証はありません。抜歯した歯の状態によっては、そのまま抜いたままになる可能性もあります。そうなると、上顎には大きな入れ歯を入れるしか治療法は無く、今回の患者様の希望の一番大きな部分が達成できない、という事になります。
 この治療が、今回の大きな山場であることを患者様にご了解いただいた上、歯冠長延長術と並行して歯牙再植を行いました。

 術後です。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23131665.jpg
 上の写真、黄色い矢印の部分が再植を行った歯です。
虫歯を取り除いた健康な歯の部分が、歯肉の上に出ています。

 ややマニアックな話になりますが、レントゲン写真も載せておきます。
術前です。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23534236.jpg
 黄色矢印が問題の歯です。
下は術後レントゲンです。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23193923.jpg
歯の根っこが短くなっているのが、わかっていただける・・・・かなあ?(^^;

 歯冠長延長術後の歯肉の治癒を待ったあとの正面写真です。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23181085.jpg
 その状態での全体像のレントゲン写真です。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23251920.jpg
 なんとか大きな山場を越えたので、あとはチャッチャと行きましょう。
土台を作っていきます。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23320746.jpg
仮歯を入れます。

重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23292316.jpg
 この状態で、どうしても根管治療が成功しなかった歯に、MTAセメント充填と歯根端切除を行いました。
 術後の全体像レントゲン写真です。
赤い矢印の。短く水平に切られた根っこが歯根端切除を行った歯です。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23364941.jpg
 さて、いよいよラスト、術後の正面写真です。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23281490.jpg
全体像です。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23422306.jpg
最後に義歯を入れてフィニッシュになります。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23432997.jpg
 下に、もう一度、初診時の写真を挙げておきます。
重症の虫歯に対して歯周外科手術(歯冠長延長術)で治療した症例・シーズン2_b0119466_23394588.jpg
 初診の頃は、さすがに悪かった歯肉の状態も、治療が進むにつれて、歯磨きも上手にていねにしてくれるようになり、非常に良い状態になっています。

 最初の頃にも書きましたが、ここまでの治療期間はちょうど1年間でした。
その間、彼は、時には仕事の都合で予約キャンセルの連絡が入ることはありましたが、ほとんど欠かすことなく、遅刻もせず、きちんと治療に通ってくれました。
 
 患者様の名誉のためにも書き添えておきますが、重症症例と言っても、第1弾の女性も含め、多くの場合、それは「特殊な方」ではありません。
この患者様も、非常に礼儀正しい、好青年でした。
 ただ、仕事が非常に忙しかったり、本来治療を受けるべきタイミングで正しい治療を受けそこなったり、あるいは、かかった歯科医院との相性が悪かったり・・・。
今回も、そんな些細な「間の悪さ」みたいなものが重なって、重症化したものと思われます・・・。

 治療の最後の方で、患者様が僕に言ってくれた言葉、
「おかげさまで、人生が変わりました・・・・。」
これが僕にとって、一番のご褒美になりました。

 残念ながら、彼はこの秋に福岡に転勤が決まりましたが、今後のメンテナンスに、福岡で僕が一番信頼している歯科医院を紹介させてもらいました。
また大阪に帰って来られたら、メンテナンスに通ってくださいね。どうぞお大事になさってください。





by healthcarenews | 2018-10-20 23:08 | 歯周病治療

貴方の健康の舵取りを。堺市北区中長尾町、山本歯科医院の歯科に関する情報のページです。


by healthcarenews
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite