ヘルスケア通信

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予防歯科の第3の敵、 歯の破折 Part4 閲覧注意!

 今夜のヘルスケア通信は「予防歯科の第3の敵、歯の破折」のPart4です。
連夜の投稿は、正月休みの長期休暇ならでは(笑)。大体、一話投稿するのに、画像やレントゲンを探して編集して軽く2~3時間はかかりますので、レギュラーの診療が始まると、次はいつ更新できるかわかりません(;^_^A。ご容赦ください・・・。

 まずは画像をご覧ください。
患者様は58歳、女性。2021年5月の写真です。
 左上(向かって右側)正面から2番目の歯と3番目歯の間の歯肉に「プクッ」っとできています(黄色矢印)。
もう、Part1、Part2、Part3を読んで頂けた方は、この「プクッ」を見て、「ああ、またか・・・。」と理解して頂けたかと思います・・・。
そう思って頂ければ、僕もこの4連作を書いた甲斐があるというものです・・(笑)。

 僕も、この「プクッ」を見た瞬間、イヤーな予感がしました・・・。
予防歯科の第3の敵、 歯の破折 Part4 閲覧注意!_b0119466_22481025.jpg
 ちなみに、約1年前、2020年6月の写真にはなにもありません・・・。
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 ここはもう、とりあえず歯科用CT撮影の一択になります。
最新型の歯科用CTは、上下顎全体の顎の骨を映し出すことができるくらいの性能があります。
予防歯科の第3の敵、 歯の破折 Part4 閲覧注意!_b0119466_23103610.jpg
 問題の歯の部分を拡大してみましょう。
左上、口腔内写真で、「プクッ」っとしていた所の骨に穴が開いています・・・(黄色矢印)。
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 すこし角度を変えてみましょう。
正面から見て、2番目の歯と3番目の歯の間の骨が無くなっています・・・。
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 皆さん「ああ、破折だ・・・!」と思われましたか?。経験的には僕もおそらくそうだと思いました・・。
でも、安易に結論を出す前に、いくつか確認の診断をしておく必要があります。
くどいようですが、破折した歯の治療は、基本、抜歯一択です。ですから絶対に診断を誤ることは許されません・・。
CT画像上に破折線(歯が割れていることを示す線)は見えていませんし、なにより、この歯は女性の前歯、しかもセラミックが入った前歯です。
抜いた後のフォローアップも考えて、慎重の上にも慎重に・・・・。

 まず、このように歯肉が腫れたりする原因は、「歯の破折」以外にも、根管からの感染による「根尖病巣」と歯肉から感染するいわゆる「歯周病」があります。
「根尖病巣」は根管治療で、「歯周病」は歯周病の治療で治す事できる可能性があるので、まずこの二つを除外診断する必要があります。

 そして、もうひとつ重要な事が、この「プクッ」の原因が、2番目の歯なのか3番目の歯なのか?という問題。両者の間にできている病巣なので、これも絶対に間違ってはいけない問題なのです。

 まず「根尖病巣」に関してですが、これはCT画像上で、両方の歯に異常は見られませんでした。
あとは、「歯周病」ですが、ここまで大きな骨の欠損(穴が開く事)がある場合は歯周病でもフラップ手術の適応になります。
つまり、歯肉を切って、中の慢性炎症を起こした組織を掻把(そうは)するのです。どちらにしろ切らないといけないのであれば、いっその事、もう中を開けて直接見る方が早そうです・・・。

 まず、患者様にフラップ手術を受けて頂くことをお願いしました。そして歯肉を開けて原因歯を確定した上で、歯周病ならばフラップ手術をする。
ヒビが入っていれば、当日はそのまま閉じて、後日、仮歯等の準備をしてから、改めて抜歯をする、という治療方針で了解していただきました。

 結果です。閲覧注意です。手術中の画像です。
2番目の歯に、ヒビが入っていました(黄色矢印)。
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 少しわかりにくいと思うので、ヒビを黄色い線でなぞってみました。上の写真と見くらべて下さい。
予防歯科の第3の敵、 歯の破折 Part4 閲覧注意!_b0119466_00074676.jpg
 この歯は、まだ割れてはいませんが、強く咬む力がかかる場所であるのと、もう周囲の骨の破壊が進んできているので、改めて抜歯をすることで、納得していただけました。
 
 この患者様は、奥歯(大臼歯)が無い患者様なのですが、体質的に虫歯になりやすく、やむなく奥歯を失ってしまわれました。くわえて歯肉の粘膜も非常に弱いため、これまで奥歯にインプラントや義歯さえも入れる事ができませんでした。
 そのため、咬む力が前歯だけに集中しますので、歯の破折のリスクはきわめて高い症例です。今後、他の歯が破折していく可能性も高いため、これからの治療方針も、いま患者様といろいろ試行錯誤中の症例です。

 このように、歯の破折の治療は、「絶対抜歯!」と簡単には言ったものの、実際には、その歯の場所や、咬み合わせ、奥歯の状態や、患者様の体質、今後の治療方法、そしてなにより抜歯そのものに納得していただけるか?という患者様の意思など、たくさんのクリアしなければならない問題を抱えているのが通常です。

 とりあえず当院では、必要な資料をできるだけ集め、誤りのないように診断を行い、最善の選択肢を提供することが責務と思っています。
あとは、ゆっくりで結構です。よく相談しましょう。
 


by healthcarenews | 2022-01-04 23:10 | 歯科用CT・3DCT

貴方の健康の舵取りを。堺市北区中長尾町、山本歯科医院の歯科に関する情報のページです。


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