ヘルスケア通信

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カテゴリ:マイクロスコープ・根管治療( 17 )

当院の根管治療技術の総力をあげて戦った難治根管治療症例について・・・

 今夜のヘルスケア通信は、久々の「マイクロスコープ・根管治療」ネタです。
マイクロスコープを導入して早や5年・・・、その取扱いにもかなり習熟し、システムも安定して、幸か不幸か、日々多数の根管治療の難治症例に取り組んでいる今日この頃であります・・・。
 その中でも昨年、僕の根管治療技術の総力をあげて、約10か月をかけて、なんとか治癒にこぎつけた症例に出会いました・・・。おそらくマイクロスコープが無かったら絶対に治療できなかった症例です。
 マイクロスコープがあれば必ず上手な治療ができる訳ではないのですが、マイクロスコープが無いと絶対にできない治療はあります。
 今夜はそんな症例を・・・、題して「当院の根管治療技術の総力をあげて戦った難治根管治療症例について・・・」。

 患者様は50歳、女性、2017年10月の初診です。
初診時、「左上大臼歯」と「右下大臼歯」に同時に重大な問題を抱えていました。
どちらも、過去に同じ歯科医院で治療したものです。
今回、他の医院で、この歯の抜歯を勧められ、当院を受診なさいました。

 まずは治療前のレントゲン写真をご覧ください。
まずは「左上大臼歯」です(下写真)。黄色丸の中に黒い影があります。
ここに膿が溜まり、腫れて、強く痛みます。
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 右下です。
「右下大臼歯」も同様に、黄色丸の中の黒い影の部分に膿が溜まっていて、腫れて痛みます。
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左右の歯が両方とも痛むので、噛むことができず、強いストレスを抱えておられました。

 とりあえず応急的に消炎処置を行い痛みを止め、3D-CTレントゲンを撮影後、根管治療にとりかかりました。

 まずは「左上大臼歯」、術前のマイクロスコープ画像です。
かぶせ物と土台を外し、感染予防のための隔壁を作った段階の写真です。
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この時点では、実は痛みの原因は何もわかりません。

 さらにマイクロスコープ拡大下で掘り進んで行くと・・・、
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中から、ドクドクと白い膿が出てくるようになりました・・・。
これでは痛くて当たり前です。

 さらに拡大して、中を覗くと・・・・、ん?!、痛みの原因にひとつたどり着きました。中でドリルが折れていたのです。
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赤い矢印が、中から出てきている「膿」です。
黄色い矢印の先の、グレーの四角形のものが折れているドリルの頭の部分です。
青い矢印は、歯の中にできている、固い「コブ」です。

 前医はこの「コブ」に邪魔されて、根管の中に正確にアクセスすることが出来ず、ドリルを折ってしまい、それで諦めて治療を不完全な状態で終えてしまった結果の痛みだろう・・・、と、この時点ではそう推察していました・・・。
 まあ、とりあえず折れたドリルを取りのぞき、邪魔な「コブ」を削り取ります。
この「コブ」を削る作業が「手探り」では、どこを削っていいのかがわからず、とても怖い作業なのです・・・。ここはマイクロスコープ下で直接見て削ります。
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 上の写真は「折れたドリル」も「コブ」も無くなって、「膿」も止まって、なんとなく「スッキリ」した根管内のマイクロ画像です。通常、上顎の大臼歯には、根管と呼ばれる神経の穴が3~4本開いているのですが、その穴も3本キレイに見えています。
 さあ、これで治るだろう、と、思ったのですが・・・、ところが!実はここからが思いのほか、さらに難しい治療になっていくのです・・・(-_-;)。

 当院には、根管が正しい位置に開かれているかどうか、電気的に検査する器械があるのですが、それで測定すると、2本の根管から「ピーッ」とエラー表示が出ます。
「?????」目で見ると、どう見ても正しく開いているように見えるのですが、検査結果は「エラー」が出るのです・・・。
そこを触るとそこからは出血が・・・・、どうやらまだ、重大な「何か」のトラブルが隠れているようです・・・。

 でも、とりあえず痛みは止まったので、ここからは「右下大臼歯」の治療にもとりかかる事にしました・・・。
麻酔をして、かぶせを外して、土台も外します・・・。一行で終わりましたが、この「土台を外す」と言う治療が、実を言うと根管治療では、大変な神経を使う作業なのですが、ここはあっさりとまたの機会に譲って割愛しておきましょう。
 
 下は、土台を外した状態の、根管内のマイクロ画像です。
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 またもや「コブ」(黄色矢印)です(^^;。何かの呪いか・・・・!
3か所の赤い矢印の白いセメント部分は、前医が治療した根管の跡ですが、「コブ」を取り除かないまま治療していますので、嫌な予感がします・・・。

 やはりマイクロ下で「コブ」を除去したのが下の写真です。
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 3本の根管がキレイに見えて「スッキリ」した画像になりました・・・、が、案の定1本の根管から「ピーッ」とエラー表示が出て、そこからは出血が・・・。
「オー、マイガーッ! こりゃあ難しいぜよおお!」こじれにこじれた根管です。簡単には治らない訳です・・・。

 ブログ上では、あっと言う間にここまで来ましたが、実際には、数回分のアポイント、何時間もの時間を費やしてここまで来ています・・・。
幸い、痛みは止まっているのと、患者様も協力的で、治療に理解を示して下さいましたので、ここからもゆっくりと時間をかける事ができました。

 先ほどから問題になっている「ピーッ」というエラー表示は、説明を加えておきますと、「パーフォレーション」と言って、「根管が正しくない位置に開いている」、簡単に言うと、「開いてはダメな所に穴が開いている」事を示しています(-_-;)。正直、歯としてはもうダメダメの状態です。従来なら、このような歯の多くは抜歯を余儀なくされていました。

 現在では、このような穴(パーフォレーション)をふさぐための良い治療法が開発されています。しかし、この穴をふさぐだけでは、もともとの根管治療は完了しません、どこかに正しい根管があるはずです・・・。
 さらに時間をかけて、CT像とにらめっこしながらマイクロスコープで探索します・・・。

 見つけました。
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エラー表示の穴のちょっと外側に、もう1本の根管がありました。
そこを、もう少し時間をかけて、ていねいに拡大していきます。
どうやら、「右下大臼歯」の本当の姿が見えてきました。
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 上の写真は、根管治療のための根管の拡大終了後の画像です。
赤い矢印2本が本来の正しい根管、黄色い矢印が本来開いてはいけないパーフォレーションの穴でした。穴の中には歯ぐきが見えてます。

 この歯の治癒のためには、この穴(パーフォレーション)を絶対に塞がなければいけません。
従来ではそれは大変難しい治療でしたが、現在ではパーフォレーションの治療のために「MTAセメント」と呼ばれる画期的なセメントが開発されています。
やや高価ですが、このセメントは、ここ最近の歯科薬品では、多くの患者様に恩恵をもたらす素晴らしい製品のひとつだと思っています。

 さて、下の画像はそのMTAセメント充填直前の写真です。
「穿孔」と書かれている黄色い矢印の部分がパーフォレーションの穴です。中から少し出血しています。
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ラバーダムと呼ばれる、感染防止用のゴムの膜を歯の周囲に張って、マイクロスコープ拡大下で、ピンポイントでセメントを充填します。

 下の画像は術後写真です。
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赤い矢印が正しい根管、黄色い矢印の部分がMTAセメントを充填した部分です。
ここまで来れば、あとは普通の根管治療です。
いつも通りに根管を消毒して、根管充填をしてこの歯の根管治療を終了しました。

 下は術後レントゲンです。
術前に有った黒い影がきれいに無くなっています。良かったあ(^^;。
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 「右下大臼歯」の治療で、今回、大体何が起こっているかがわかりましたので、今度は改めて「左上大臼歯」の治療に取りかかります。
CTとにらめっこしながらマイクロスコープで正しい根管を探索します・・・。
上の歯は、なかなか難しかったのですが、慎重に探していった結果、まず1本を見つけました。
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 赤い矢印が「ピーッ」っとエラー表示が出た穿孔(パーフォレーション)した穴の部分、黄色い矢印の部分が正しい根管の位置です。こう見ると、かなり離れています(-_-;)。初診時に開けた部分からでは想像もできない場所に正しい根管があった訳です。これでは「手探り」の治療では、正確な治療は無理であったろうと思われます・・・。

 「左上大臼歯」には、エラー根管が2本ありましたので、とりあえずもう1本も探して見つけます。
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赤い矢印がエラー表示の穿孔(パーフォレーション)部分。黄色い矢印の部分が正しい根管です。
「左上大臼歯」には2か所もパーフォレーションが起きていたのです。

 治療法はもう一択、「MTAセメント」しかありません。
下の画像は、MTAセメント充填直前の写真。やはりラバーダム防湿下、マイクロスコープ下での治療になりました。
3本の赤い矢印の部分が正しい根管、黄色い矢印の部分がエラー根管です。
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 下の画像はMTAセメント充填後です。
MB根、DB根、P根と書いてあるところが正しい根管です。
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 ここまで来ればあとは「右下大臼歯」と同じで、いつも通りの根管治療の後、根管充填を行います。
下は術後レントゲン写真です。
まだ完全とは言えませんが、やはり術前に有った黒い影が消えてきています。もちろん、痛みも腫れももうありません。
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これで、右下大臼歯、左上大臼歯2本の根管治療が終了しました(^^;。めでたしめでたし。

 さて、根管治療終了後、念のため仮歯を入れて数か月経過を観察しましたが、特に異常が見られなかったため、
2018年8月末、両方の歯にメタルボンドセラミッククラウンを装着し、定期的なメンテナンスに移行しました。

 最後に術前、術後のそれぞれの口腔内写真です。
まず左上大臼歯、術前です。黒く見える銀歯が問題の歯です。
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術後です。
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右下大臼歯、術前です。やはり銀歯が問題の歯です。
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術後です。
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 根管治療とマイクロスコープのネタを扱うとき、いつも書くのですが、マイクロスコープがあれば、いつもこんな治療ができる訳ではありません。
その点だけは、くどいようですがご了承しておいて下さい。今回は、ただ「奇跡的に」偶然治っただけかもしれませんし、数年後、あるいはもっと早く数か月後にも、また炎症を再発し、抜歯することになるかもしれません。根管治療を、自費診療(保険外診療)のみで診療する「根管治療専門医」ですら、難治性の根管治療の場合、その成功率は50~60%と言われています。
 もし大きなひび割れが入っている歯なら、治療成功率はもっと低く、多くは早期に抜歯に至っているのが実情です。
ただ、誰でも抜かないで済むものなら抜歯をしたくないのが人情です。僕はこの部分の「納得」のお手伝いがしたいと思って、必要に応じてのみマイクロスコープを使っています。難治性の根管治療に悩む方に、「良いご縁」となれば幸いです。
 












by healthcarenews | 2018-10-12 23:40 | マイクロスコープ・根管治療

マイクロスコープで覗く難治症例たち・・・

 当院がマイクロスコープを導入して3年弱・・・。
いまや僕の診療には無くてはならないものになっています。

「有る」と、「無い」では、その診断能力と治療精度の差は絶大で、そのためか、当院には最近多数の根管治療の難治症例の方が見えています。
 
 残念ながら、そのすべてをマイクロスコープを使った根管治療なら「治せる!」と、いうものではありません。その点は絶対に理解しておいて下さい。

 しかし、難治となっている原因の特定は、「無い」よりははるかに高精度にできます。
なにより、「原因」のわからないものが治療できる訳がありません・・・。
 
 今日は、その「難治」となっている根管治療の代表的な難治の「原因」をいくつかご紹介しましょう。

1.歯の破折・亀裂・ヒビ
意外と多いのが歯が割れていたり亀裂(ヒビ)が入っていたりすることです(黄色矢印)。
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多くは昔に神経を取った歯に起こりますが、最近はストレス社会のためか、歯ぎしりをしている人が増え、生きている歯にも起こす人が増えています。このような歯も痛みの原因の特定が難しい歯です。
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2.根管の見落とし
根管には時にはすごく細いものもあり、そんな時は細さ60ミクロンの針で探さないと無理な根管もあります。そんな根管はなかなか肉眼では見つけられません。

術前(下写真)。上顎の大臼歯には、細い根管が隠れていることが多々あります。
黄色矢印は見落としている根管です。
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術後。見落として手付かずだった根管を拡大しました。中が真っ黒に汚染されています。
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3.樋状根(といじょうこん)
下顎の第2大臼歯の根管は、時に樋状根と呼ばれる特殊な形をしています。
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この樋状根も予測がつかない形態のため、多くが難治になります。

4.不定形根管
上顎の第2大臼歯に多いのですが、定型的な形の根管ではなく、多くのバラエティに富んだ形をしている根管があります。
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このような根管は手探りだけでは発見、追従が難しく難治になる時があります。

5.パーフォレーション
時に、虫歯などの様々な原因で、根管外に穴が開く時があります。
これも多くは難治になります。
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6.虫歯
当たり前のようですが、虫歯は抜歯の大きな原因のひとつです。
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一部分の虫歯なら除去することができますが、上の写真のように、歯全体に感染しているような虫歯は抜歯になる確率が高くなります。
 
by healthcarenews | 2016-08-17 12:10 | マイクロスコープ・根管治療

根管治療は奥深い・・・・・

 さて、今夜のヘルスケア通信は、久々に根管治療ネタです。

 根管治療の難治症例(まあ、ひらたく言うと、「根っこの治療を何回もやっているのに、いつまでたっても痛みが止まらないよー(-_-;)」みたいな歯の治療の事です。)には、当院では、もうCTとマイクロスコープが必須の治療になってきています・・・。

今夜は、ややマニアックですが、そんなネタをひとつ・・・。

 まずは術前のレントゲンから・・・。まずはこの時点で万人向けではありません(^^;。
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 なかなか痛みが止まらない歯。レントゲンを撮ると、根っこの先に黒い影(黄色い円内)。
やはり通常はこの歯根が原因と考え、この根を治療するのですが、他院で何回も治療しているのに治りません。

 僕も最初はこの歯根を治療しましたがやはり痛みが止まりません。
ルーティンの治療後、こういう通常と違う反応を見せた場合はまず難治症例です。
そこでCTの出番です。
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歯根全体を包むように、大きな黒い影が出来ています。
通常の歯根からの感染だけでは、こんな形の影はあまりできません。
そして通常のレントゲンやパノラマ写真からだけでは、この画像は見えません。

ここまでくるとマイクロスコープしかありません。
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上の写真は、歯の中のの5倍拡大写真です。
赤の矢印は根管の入口です。
そして、歯全体に無数の亀裂が走っています(黄色矢印)。
そう、今回の歯の痛みの原因は、歯に入ったヒビからの感染だったのです(-_-;)。

とにかくヒビが入っている根管内を洗浄し、感染源を除去。
ようやく痛みは止まりました・・・、ふう(;´・ω・)!。

 根管治療と言っても、すべてが歯の根の消毒で治るわけではありません。
今回みたいにヒビが原因だったり、歯周病が原因の時もあります・・・。
根管治療は奥深い・・・。

 さて、この歯のこれからですが、正直言って、一度ひび割れた歯の寿命は長くありません。
ひび割れを元通り治す治療はありません。この歯をどう治療するのか・・・。
抜歯をしてしまうのか、それともできるだけの延命治療を行っていくのか、ここからは患者様とよく相談をして決めていかなければなりません。

 CTとマイクロスコープを使って、細心の注意を払って治療をしても救えない歯もあります・・・。それはご了解ください。しかし、正しい診断が付くか付かないかで、この歯とその周辺の歯の治療方針は大きく変わってしまいます。
その意味でも精密根管治療は意義があると思っています。
やはり根管治療は奥深い・・・。
by healthcarenews | 2016-01-26 00:24 | マイクロスコープ・根管治療

精密根管治療

 今回は、「精密根管治療」の話題です。
 
 マイクロスコープの効用は、もう何度となく書いていますが、その効用の大きい治療のひとつに根管治療(歯の根の神経の管を洗浄消毒する事)があります。
 根管は、歯の中でも一番深く暗いところに開いているため、その根管を探し消毒していくのに、従来はほとんどの場合手探りで行っていました。もともと大臼歯は根管が大体何本、小臼歯は大体何本、というように大学で教えられ、その数にしたがって根管を探して治療するのですが、そこは人間の体の事、実は非常にバリエーションに富んでおり、単に決められた数だけ探していれば、その分見落としも出てくる訳です・・・。

 下の写真をご覧ください。
第一大臼歯の近心根(専門用語ですみません(汗))の拡大写真です。
大学では、この根は「通常1根管ないし2根管、そして2根管の方が多い」と習いました・・・。

しかし、3根管開いています(黄色矢印部分)。
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 滅多に無い事ですが、有るには有ります。
専門書の症例報告では何度か見たことがありますが、僕の記憶にある限り、実際に診たのは初めてかもしれません。

 マイクロスコープが無かったら見落としていたかもしれません。
大学で習った通り、2根管だけ消毒して、満足して治療を終えていたでしょう。
そうするとどうなるのか?治療当初はわからないのですが、何年か経つと見落としていた根管から感染を起こし、根っこの先に病変ができるか、あるいは膿んで腫れてきたりします・・・。
一度治療したはずなのに、なんか調子が悪い歯・・・、もちろんすべてではないですが、こんな所に原因がある時もあるのです。

 マイクロスコープを使った精密根管治療。
もはや虫歯がたくさんできて、それを端から削っていた時代は終わっています。
しっかり予防をした上で、どうしてもできた虫歯はしっかりした治療を受ける・・・。
そんな時代になってきました。










by healthcarenews | 2015-01-28 01:27 | マイクロスコープ・根管治療

かぶせた冠(クラウン)を外さずに行う根管治療

 今回は、かぶせた冠(クラウン)を外さずに行う根管治療の話です。

 またまたレントゲン写真から始まって恐縮です。
下のレントゲン写真、黄色い丸の中、根っこの先になんとなく黒い影が見えています。
その部分の歯ぐきもプックリ腫れています(術前の口の中の写真を撮り忘れてました(;´・ω・))。
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レントゲンで見た限り、根っこのセメントは先までしっかり詰まっている様なのですが、何かが原因で、この部分で炎症を起こしているのはまちがいありません。

 通常なら、かぶせ物(クラウン)を外して治療をするのですが、この患者さまはこれより奥歯が無く、このかぶせ物を外すと咬めなくなってしまいます・・・。

 やむなく、かぶせ物を外さずに、かぶせの上から小さな穴を開けて根管治療をすることにしました。難しい治療になりますが、マイクロスコープを使うことで可能になります。

 咬み合わせの所から小さな穴を開けて、まず中の心棒になっているネジを慎重に取り除きます。
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感染を起こして、ネジも真っ黒に汚染されています。

 穴を開けた部分をマイクロスコープで覗きます。
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青矢印は正常なかぶせ物の形態です。黄色矢印が穴を開けた部分です。
やはり、中もヘドロの様な物で真っ黒に汚染されていました。

 汚染物を除去し、薬液で中をよく洗浄します。根管洗浄と言って、根管治療のなかでも最も大切な部分です。
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 黄色矢印の部分が、キレイになって、歯の色が見えてきているのがわかります。
マイクロスコープが無いと、このあたりは手探りの作業になるため、非常に難易度が高いのですが、マイクロスコープを覗きながら行うことで、ひとつひとつ確実に治療を進めることができます。

 ある程度、洗浄を続けていくと、もう1本、細い神経の管を見つけました(赤い矢印)。
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この、下顎の第一小臼歯は、従来、根管が1本と思われていましたが(僕の大学時代はそう教えられていました・・・。)、近年では拡大、診断技術が発達し、2根管のものが、相当数あることが判ってきました。今回も、このあたりが感染の原因だった可能性があります。
by healthcarenews | 2014-11-03 18:19 | マイクロスコープ・根管治療

マイクロスコープでできること・4 折れたドリルの除去・2

 マイクロスコープでできること・・の第4弾に、折れたドリル(ファイル)の除去を、もう1症例追加をしておきましょう。
 
 術前です。
左上の一番奥の歯、神経は取ってある歯でしたが、大きな穴が開いており、治療を希望され来院です。
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またレントゲン写真で恐縮ですが、黄色い丸の中に、白い棒状の影が見えています。
これが折れたドリル(ファイル)の影です。幸い、折れたドリルのすき間から、根っこの先まで消毒薬は通りそうだったので、バイパス治療といって、そのままでも根管治療は可能でした。

 しかし、取れるものなら取りたくなるのは人情です。
マイクロスコープの出番です。覗いて見るとドリルの頭が見えます。
俄然やる気が出ます(笑)。

 奮闘20分・・・。ドリルが浮いてきました(黄色い矢印)
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 実はここからが大事です(;´・ω・)。小さいものなので、うっかり見失ったり流したりしないように慎重に取り出す必要があります。
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 なんとか、取り出すことに成功しました!(^^)!。
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まあ、こんな治療はあんまり無いに越したことはないのですがねえ・・・・。
by healthcarenews | 2014-11-02 23:20 | マイクロスコープ・根管治療

マイクロスコープでできること・3 MTAセメント治療

 比較的静かな台風と連休のおかげで(できた暇で)、マイクロスコープ関連のネタをたてつづけに更新です。

 さて根管治療3連発の最後のネタはMTAセメントです・・・。

 MTAセメント・・・・、これ説明できません(;´・ω・)。組成の化学物質の長たらしい名前の頭文字を取った略名ですが、正式名を書いても意味ないですしね(笑)。興味のある方は「MTAセメント」で検索して下さい。
リンクも張らなかったのは、検索してもわかりやすく説明してあるサイトが無かったからです・・・(^^;)。

 じゃあ、どうなのか?
根管治療で有名な某大学教授が語った言葉を引用すれば、「MTAセメントは歯科材料としては、今世紀最大の発明である・・・。」だそうです。

 実際、僕も画期的だと思います。
従来では出来なかった治療ができるようになったのは間違いありません。

 このセメントが従来のセメントと大きく違うところは、水分があるところでもしっかり固まる、ということです。
もともと口の中は「水分」や「血液」がたくさんある所ですから、今までのセメントは、そこをどう乾燥させてしっかり固めるか、ということに苦心をしてきたわけですが、このセメントは、その部分を画期的にクリアしたわけです。
 ですから従来では抜歯になっていた、歯の横のほうに穴が開いたような症例でも治癒の可能性が出てきました・・・。
 この治療にマイクロスコープは絶対必要ではありませんが、使った方が精密で確実なのは言うまでもありません。

 それでは症例です。またもやレントゲンです。根管治療は顎の骨の中の治療のため、パッと目に見える写真が撮れないのですm(__)m。 

 術前、「時々腫れて痛みが出る。」と訴えて来られた患者さまのレントゲン写真です。根っこの横に黒い影ができています。難しく考えずに「黒い影が悪い!」って考えてください(笑)。
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その影ができた原因が、 この一枚のレントゲンではいまいちはっきりしません。手探りでもなんとなく通常の手ごたえがありません・・・。こういう時は、もう迷わずCTを撮ります。結論が劇的に早く出ます。
CT像の一枚です。
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 根っこの中に、黒い影に向かって真っすぐにバイパスみたいな太く黒い線が入っています。歯の根の横に穴が開いているのです。従来なら間違いなく抜歯です。バイパスの原因は?不明です・・・。

 根管治療の後、病巣に向けて、マイクロスコープ下でMTAセメント充填を行いました。
術後です。
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 病巣の黒い部分が、やや薄くなっているのがわかります。
今のところ経過は順調で、術後、痛みや腫れは出ていません・・。

 もちろんMTAが万能というわけではありません。この症例も、これから、という所でしょう。
今後慎重に経過観察を行っていくつもりです。

 ところで、今年最大級と言われた台風は先ほど岸和田に上陸したみたいです。今も雨は強く降っていますが風はそれほどではありません。今年は広島の土砂災害や、御嶽山の噴火など、悲惨で甚大な自然災害が続いたので、今回も最大級の警戒をしながら台風を迎えました。・・・が、幸い今のところ多数の死者を出すような災害には至っていないようです。不幸中の幸いと言えると思いますが、それでも被害を受けられた方はいらっしゃいます。心からお見舞い申し上げます。
 
by healthcarenews | 2014-10-13 22:35 | マイクロスコープ・根管治療

マイクロスコープでできること・2 折れたドリルの除去

 私たち歯科医師の仕事のうちのひとつとして(これはかなり大事な部分を占めるのですが・・・)、
虫歯などで痛みが出た歯の神経を取る治療があります。
また神経が死んでしまったり、過去に神経が取ってある歯に、再び細菌が感染して痛みが出た場合も、同様の治療になります。これを根管治療と言います。根管治療について詳しくははコチラを・・・・

 この根管治療、神経の細い管に細いドリルを入れて神経を除去していくので、ごく稀ですが、このドリルが折れることがあります。

 多くの場合、歯の根っこの中でドリルが折れても治療には大きく影響しませんので、放置の場合も多いのですが、取れるものなら取りたくなるのが、人情ではあります。

 この折れたドリル、肉眼では取ることはできません。折れたドリルの除去はマイクロスコープがないと絶対にできない治療のひとつになります。

 例によってレントゲン写真ですが、ご覧下さい。
術前です。写真の中の黄色い丸の中にある白い棒状の影が折れたドリルです。
患者さまは、もういつごろ治療したのか覚えてない、というくらい古い治療です。
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 長い間、痛みもなく問題なく機能していたみたいですが、今回、「咬むと痛い」、ということで来院されました。
とりあえず、かぶせを外し、根っこの中を洗浄、消毒し、抗生物質を飲んでもらったら痛みは止まりました・・・。
まずは一安心。

 ここで試しに根っこの中をマイクロスコープで精査すると・・・・、見えます。折れたドリルが・・・・。
くどいようですが、取らなくてもとりあえず治るけど、取れるなら取りたくなるのが人情です(笑)。

 で、今回は、わりと簡単に取れました(;^ω^)。除去後です。黄色い丸の中の白い影がなくなっています。
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 最後はセメントで根っこの先までしっかり詰めて根管治療終了です。
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 さて、折れたドリルの除去。治療にはいくつかの条件がつきます。
1.まず、マイクロスコープで折れたドリルが見えること。ケースによっては深すぎて見えないことがありますが、この場合はドリルの除去は不可能です。
2.また、見えたら必ず取れる、というものでもありません。ドリルの食い込み具合によっては、どうしても取れない場合があります。
3.マイクロスコープを使った治療全般に言えることですが、治療には時間と費用がかかる場合があります。
特に、時間は長時間口を開けておかなければなりませんのでご注意ください。
4.無理には取らない、ということ。前述のように多くの場合は治療には大きく影響しないため、必ず取らないといけないものではありません。ですから、無理はしません。

 以上の条件がそろった場合のみ、ドリルの除去はチャレンジします。ご了承ください。
by healthcarenews | 2014-10-13 19:37 | マイクロスコープ・根管治療

顕微鏡下で歯根端切除を行った一症例

 さて、今回のネタもマイクロスコープ関連です。
もちろん、顕微鏡歯科ばかりしているわけではなく、並行してインプラントや審美修復も行っているわけですが、ま、最新の技術としては、また今までできなかったことができるようになった、という点でも、どうしても顕微鏡関連のレポートが増えてしまいますねー。ご容赦ください。

 で、今回は歯根端切除術を行いました。歯根端切除術に関してはコチラをご覧ください
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もっと詳しく知りたい方は、例えばコチラもどうぞ
よそのサイトで恐縮ですが、さすがに説明が大変なもんで・・・・・(;^ω^)。

 まずは術前のレントゲン写真。
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一般の方はレントゲン写真で説明されても、「なんじゃこら?」か「ふーん」で終わりでしょうから、もうあっさりいきましょう(笑)。黄色い丸で囲ってある根っこの先の黒い影が悪い病巣です。
 
 この病巣、中には慢性炎症を起こした不良肉芽と細菌と毒素が詰まっています。
最近では、この毒素が原因で、腎不全や心臓病を起こすことが解っており、小さいものはともかく、大きいものはできるだけ摘出するか抜歯をすることが望まれます。

 術後です。
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病巣の原因となっている歯の根っこの先端の部分も3ミリほど切り取り、病巣摘出後、人工骨を詰めています。レントゲンで見ても、病巣が薄くなっています・・・・。

「ふーん」でしょうねえ、やっぱり(;^ω^)。

 実は、この歯根端切除、技術としては昔から行われている歴史がある手術です。しかし、昔は口腔外科医の領域で、その成功率も低く、60パーセントぐらいと言われており、そのため多くは抜歯になっていました。

 しかし、現在ではマイクロスコープの発達による精密治療と技術・材料のの進歩で、根管治療の専門医では、成功率90パーセント以上と、歯を残せる確率が格段に上がってきています。

 自分の歯の健康を守るために、まずは予防。そして、どうしても悪くしてしまった歯には、精密な治療でとことんまで、歯を残す可能性を追求する・・・。今は、それができる時代になってきました。





 
by healthcarenews | 2014-10-12 20:39 | マイクロスコープ・根管治療

ひび!・ヒビ!・クラック!・crack!・・・顕微鏡でできる事。

 さて、今夜もマイクロスコープで何ができるのか?という話の続きをしていきましょう。

 明らかに虫歯や、歯周病などで痛みが出ているケースは別として、一度治療してある歯が、思わぬ所で痛みや腫れが起きたりした場合、確定診断の難しいケースが時にはあります。そういう歯の治療の場合、最近ではかなりの割合で、治療期間中、1度はマイクロスコープで中を覗くようにしています。
 
 その時、何を探すのか?それは歯の「ヒビ」、歯の根っこの「ヒビ割れ」です・・・・。

 まずは1枚目、右下小臼歯。かぶせてある歯が痛みだしました・・・。虫歯でも歯周病でもありません・・・。
かぶせの金属は外さずに慎重に上から穴を開けて、病巣を探します・・・。ヒビです・・・(黄色い矢印)。
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拡大してみましょう。ヒビです・・・。
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2症例目、左上大臼歯のごく一部にレントゲンの影がありました。歯の根のごく一部にヒビが入っていました(矢印)。
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3例目、ヒビの原因はほとんどの場合、噛む力によるものです。人間の噛む力は想像以上に強力で、金属のかぶせでも時には噛み割ってしまいます。(矢印)
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4例目、メンテナンス患者様ですが、やはり時々想定外の痛みや腫れが出ていました。
やむを得ずかぶせを外して見ると、案の定ヒビが入っていました(矢印)。
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5例目、これも時々、体調の悪い時、プクリと腫れる歯でした・・・。ヒビ割れから歯ぐきのピンクが見えています(矢印)。
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6例目、まだ若い患者様だったのに、年齢の割にはレントゲンに大きな影が・・・。覗いて見るとやはり歯のヒビ割れが縦にまっすぐ入っていました・・・(矢印)。
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7例目、体格の良い方は、噛む力も強いものです。柔道やウェイトトレーニングをされている方なども、要注意と言えます・・・。ヒビです・・・(矢印)。
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 まだまだ、同じような症例はたくさんあります。ここではその一部しかご紹介できませんが、おかげさまで最近では、その腫れ方や痛みの出方、レントゲンの影の状態で、かなり、ピン!と来るようになりました・・・(汗)。

 では、ヒビが有るか無いかで、治療がどう変わるのか?
 まず第一に知っておいていただきたいことは、歯のヒビは、骨のヒビと違って、もう2度と自然にくっついたり、治ったりすることはないと言うことです。だから、大きなヒビが入っている歯は、基本的には「抜歯」になる、と考えて下さい。ですから、大きなヒビが入っている歯を、ヒビに気づかずに長期間治療すること全く時間の無駄、と言うことになります。

 小さなヒビ割れの歯の場合は、その時点では抜歯せず、慎重に経過観察をしながら残すことができることもあります。でも、その場合でも噛み合わせのさせ方や、治療の考え方がまったく違ってきます・・。
ヒビ割れの歯には、それなりの対処があります。これはまたいつかお話しましょう・・・。

 何より大切なのは、その歯にヒビが入っていることを患者様に理解してもらうことです・・・。時々、不調を起こす、その歯の不調の原因を、原因不明と一言で片付けるのではなく、肩こりや体調のせいにするのでもなく(もちろん、そういう場合もあります・・・)、キチンと説明できることが、治療の第一歩になるからです。
by healthcarenews | 2014-06-09 23:41 | マイクロスコープ・根管治療

貴方の健康の舵取りを。堺市北区中長尾町、山本歯科医院の歯科に関する情報のページです。


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