ヘルスケア通信

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インプラント再考・12 入れ歯をインプラントで治す・2

 今夜のヘルスケア通信も「インプラント再考」の第12夜。だんだん佳境、というか終盤に近付いています(^^;。がんばって!
今夜もサブタイトルは「入れ歯をインプラントで治す」のパート2です。

 まずは症例写真をご覧ください。
患者様は女性。この写真の時で62歳です。
この年齢で、もうすでに上顎には総入れ歯が入っています。これだけでも大変痛ましい話なのですが・・・。
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しかし、下顎も歯周病で悲惨なことになっていました。
右下です。
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前歯部内側です。
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左下です。
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特に、左下の前歯から奥歯にかけて、歯ぐきが大きく腫れて尋常ではありません・・・。

 前にも述べましたが、治療の基本は環境をシンプルにすること。
予後(治療の結末)が不安定な部分を残すのか、取ってしまうのか?これはいつも悩ましい問題ですが、悪い所が一部だけなら残すこともアリ、ですし、逆に治療が全顎に及ぶときは、取ってしまったほうが、長期的に安定します・・・。この下顎も治療方針は「抜歯→入れ歯」です。

 下は抜歯後、入れ歯を入れたところの正面写真です。
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ご覧のように、左下半分は歯が無くなり、入れ歯になっています。。
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 ちょっと専門的な話になりますが、上顎の「総入れ歯」の安定は、下顎としっかり咬み合う事から生まれます。そのため、奥歯がしっかり咬み合う事がとても大切なのですが、残念ながら下顎も入れ歯・・・、しかも口元のど真ん中に入れ歯を留める「針金」がついています・・・。これは女性にはつらいですねえ・・・(-_-;)。

 審美的に「針金」を隠すための治療としては、磁石を使う「マグネット義歯」や、「コーヌスクローネ」と呼ばれる複雑な二重冠を用いたアタッチメント義歯もできるのですが、どちらも中途半端にコストがかかる割には結局「入れ歯」であることに変わりありません・・・。

 もうひとつ専門的な話をすると、左右どちらかの歯がまったく無くて、反対の歯が残っている場合、これを「すれ違い咬合」と呼ぶのですが、入れ歯の安定が最も難しい咬み合わせのひとつなのです。「マグネット」でも「コーヌス」でも、この問題は解決できません。ここはもう、下顎はインプラント一択でしょう。

 ただし、本来ならできるだけ奥歯にインプラントを入れたいのですが、今回の症例は、奥歯の部分の顎の骨が歯周病でほとんど無くなっていたため、ちょっと「特殊なインプラント」になりました・・・。

 インプラント埋入後です。下顎前歯部分の顎の骨が厚いところに、4本のインプラントを打っています。
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 上から見たところです。
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インプラントの上に入るセラミックの歯の部分(上部構造体)も、特殊な形をしています。
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 上顎の総入れ歯も「メタルプレート義歯(金属床)」で仕上げました。
 
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慣れないと見た目はギョッとしますが、金属床は、丈夫で長持ちし、また薄くできるので、食事の味がわかりやすく発音もしやすい、という大きなメリットがあります。

 改めて、術後(2009年4月)全体像の写真です。
 正面です。
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針金が無くなって、見た目がスッキリしています。

 右側です。
右下のご自分の歯にはセラミックブリッジを入れています。
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 セラミックは、表面がガラス状になっているため、汚れが付きにくく、清掃がしやすいというメリットがあります。
今回は、この右下のセラミックブリッジの他、インプラントにセラミックを用いるのはもちろん、義歯の人工歯にもセラミックを用いていますので、きれいなツヤが出て清掃がしやすいお口の中になっています。そのぶん歯ぐきの状態もすごく良くなっています。

 左側です。
こちらにはインプラントを用いた、奥歯まで歯を延ばした大きな「延長ブリッジ」が入っています。
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 「延長ブリッジ」は保険の歯にも一部認められているテクニックなのですが、咬み合せの力のかかり方に無理があるため、残っている歯を必ず痛めてしまいますので、僕は最近ではほとんどやりません。
 ただ、今回のインプラントのみ例外で、上顎が総入れ歯なので無理な咬み合せの力がかからない事と、インプラントを4本打つことができ、またそこにネジ止めでセラミック延長ブリッジを留めることができた、といういくつかの条件が重なって達成できた幸運なケースです。
そして、これでしっかり左右の噛み合わせのバランスを取ることができました。これはインプラントが無ければ絶対に達成できなかった咬み合わせです。

 術後約9年後、現在の状態です。患者様は現在72歳。
上の術後写真の時で2009年4月、下は20017年12月の写真です。(上の総入れ歯ははずした状態の写真です)
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 現在で約9年経過していますが、咬み合わせや使い心地などにはまったく問題は生じていません。
インプラントは動きませんが、天然歯は徐々に動いていきますのでインプラントとの間にスキマが開いてきていますが、今のところ不具合にはなっていません。
また、これは希望があればいつでもリペア(修理)出来るのですが、気になっていないらしく、そのままにしています(笑)。
 
 時折、上顎の総入れ歯の調整はしていますが、大きなものではありません。
これは、もし下顎が入れ歯だったら、もしインプラントが無ければ、絶対に達成できなかった安定感です。
下の入れ歯はわりと良く痛みが出るので(経験がある方がいらっしゃると思います)、それに合わせて調整や修理を繰り返し、それに引きずられる形で、上顎も調子が悪くなることが多々あります。入れ歯が片方だけ、という事は、痛みや不具合が出る確率を減らし、治療をシンプルにします。それがひいてはQOL(生活の質)を上げていく事になります。
 
 現在では、インプラント・オーバーデンチャー、と言って、1~2本のインプラントの上に入れ歯を入れるテクニックが発達してきています。
1~2本だけでも、特に下顎は、何にも歯が無い所に入れ歯を入れるより、入れ歯が安定し、使い心地が良くなります。
多数のインプラントを打つより、はるかに低コストで、低リスクな治療になります。
 
 インプラントは、もはや特殊で特別な治療ではありません。
ネットを調べると500万~1000万円もかけて、長くは持たなかった、という悲惨な症例もあるようですが、それは、すでに口腔環境が破壊されたハイリスクな症例に、無理してハイコストなインプラント治療を行った結果です。その行為が特殊なだけで、そんな情報だけで、インプラントの価値が誤解されるのは本当に悲しいことだと思います。
 
 入れ歯との併用も良し、少数のインプラントも良し、上手に使えばインプラントは患者様のQOLを大きく向上させる貴重なツールです。
これからも大事に治療していきたいと思います。
 

 

 

 






# by healthcarenews | 2018-04-13 00:13 | インプラント

インプラント再考・11 入れ歯をインプラントで治す!・1

 今夜のヘルスケア通信は、「インプラント再考」の第11夜。
題して「入れ歯をインプラントで治す!」。
 これ、なんとなく意味はわかって頂けると思いますが、日本語にはなっていないですね(^^;。
正確には、「入れ歯を入れていた部分に、インプラントを入れて、入れ歯の不具合を解消する!」ってとこでしょう。

 まずは症例です。
患者様は初診時75歳男性。
結構、上下スカスカに抜けています。
下は正面写真です。

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次は、右横からの写真。

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 ご覧のように、ほとんどの歯が咬み合っていなくて、右上2本だけで噛んでいます。
これでは、この2本は、遅かれ早かれ必ずダメになります。

 現代の治療の基本、長期的に安定して機能する良い治療の基本は、物事をできるだけシンプルにすることです。
まず、予後が予測できない(将来悪くなる可能性が高い)上顎の2本は抜歯して総入れ歯を入れました。(下、写真)
文章で説明するのはちょっと難しいのですが、上顎に関しては、中途半端に歯が残っているより、総入れ歯の方が咬みやすい入れ歯になることが多くあります。
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 下顎は、まだ歯が残っているので、部分入れ歯に・・・。
逆に下顎の入れ歯は、残っている歯を1本でも大切にして、総入れ歯にならないように頑張らねばなりません。
 患者様によく言うのですが、下顎の「総入れ歯」を例えるなら、「鼻緒が切れかかったゲタ」と、想像して頂ければ、その使いづらさが理解して頂けると思います。
 もちろん、たまに上手に使われている患者様もいらっしゃいますが、多くの方は合わない入れ歯に苦しんでおられます。

 さて、先程、物事をシンプルに・・・、と書きましたが、今回も基本は同じです。
2つの「入れ歯」よりは、1つの「入れ歯」の方が楽に決まっています。残っている歯の負担を減らし、その寿命を延ばすためにも、下顎は「入れ歯」をやめて「インプラント」を選択しました。
 上顎も「総入れ歯」をやめてインプラントにする選択肢もありますが、総入れ歯をインプラントに替えるためには、6本から8本のインプラントを同時に打って、その日のうちに仮歯まで作る必要があり、かなりのコストと、それなりのリスクを伴う手術が必要になります。先ほども述べたように、上顎の総義歯は、意外と上手くいくケースが多いので、ここはまず、下顎を「インプラント」、上顎を「総入れ歯」で治療することにして、リスクとコストのバランスを取ることにしました。

 術中です。
右側2本・・・、
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左側3本、インプラントを埋入しました。
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前歯の抜けているところは、セラミックブリッジで対応しています。

 改めて術後写真です。
正面、
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右下、
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左下です。
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全体像です。
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 今回の症例は、僕が考えるインプラント治療のひとつの在り方を示しています。
大きく歯を失った症例、「大きな入れ歯」が入っている症例に、もし、どうしても「インプラント」を入れてくれと言われたら、精査の上、可能なら入れようと思います。それはそれで、患者様にとっても大きな福音になると思っています。

 しかし、逆に、かならずしもすべてをインプラントで治療しよう、とかは考えてはいません。ブリッジが可能なところはブリッジ治療を行い、入れ歯がの方がメリットが高いと考えれば、「入れ歯」との併用も「有り」だと思っています。

 専門家として、サーカスのような難しい技術を追い求めるのではなく、「メリットとデメリット」「コストとリスク」、そして、その後の「長期的なメンテナンス性」。このバランスをしっかり見極める事も、臨床家としてはとても大切な事だと考えるからです。

 一連の「インプラント再考」第1夜から10夜までに述べたように、あるいは「ヘルスケア通信」全体の中で常々述べているように、まずは最初の1本を失わないようにすること、そして残念ながら失ってしまった時には、将来の事を考えて、どう治療するかをしっかり選択すること、これが最も大切です。

 しかし、残念ながら、それもすべて過去の物になってしまって、現在「入れ歯」苦しんでおられる方、あるいは、これから「入れ歯」を入れられる方。
ご一緒に最善の方法を模索させて頂きます。



# by healthcarenews | 2018-04-11 00:40 | インプラント

インプラント再考・10 審美を極める・・!「抜歯即時インプラント」。

 今夜のヘルスケア通信は、「インプラント再考」の第10夜。
今夜のテーマは「抜歯即時インプラント」。平たく言うと「歯を抜くと同時に、すぐインプラントを入れるテクニック」についてです。
前歯に、インプラントを美しく入れるためには、絶対に欠かせないテクニックです。

 ひと口に「インプラント」と言っても、じつは様々な種類やアプローチ法があり、治療の目的に合わせてそれらを組み合わせ、選択していく時代になっています。
第9夜までが「インプラントの基礎編」なら、ここからは「インプラントの応用編」ってとこでしょうか・・・。ちょっとマニアックな話にもなり、難しく感じるかもしれませんがご了承下さいm(__)m。

 まずは例によって症例から・・・。
患者様は52歳男性。
右前の正面の歯に問題を抱えて来院なさいました・・・(黄矢印)。
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 まあ一見、なんの異常もないように見える正面写真ですが・・・・、
でもCTを撮ってみると・・・・。
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歯の根っこが折れています。黄色い矢印の部分の黒い線が、歯が折れているところです。

 ケガなどで歯が折れた時、歯ぐきの浅いところで折れた場合は、再植や矯正など、いろいろな方法で歯を残すのですが、歯ぐきの中の深い所で折れた場合はやむなく抜歯になる確率が高くなります。

 今回のケースも歯ぐきの深い所で歯が折れ、残る根っこも短かったため、抜歯の選択になりました。
そして、左右の歯は健康な歯であったため、当然ブリッジは避けてインプラント治療をすることになりました。

 さて、ここで「抜歯即時インプラント」の登場です。
 インプラント治療は、あごの骨の中に金属のねじを埋め込む治療ですので、土台となる骨がしっかりしていないとうまくいきません。ですので、通常、歯を抜いた後3か月くらい骨の治りを待ってからインプラントの埋め込み手術を行うのが一般的です。
骨の回復の経過は個人差がありますので、「骨がしっかり治癒したこと」を確認してから行った方が安心なのです。

 ただし、「例外」があります。前歯、特に「上顎の前歯のインプラント」は、「歯を抜いて、しっかり土台が治癒するのを待ってインプラントを入れる」のではなく、「歯を抜くと同時に、すぐにインプラントを入れる」方が有利な場合があるのです・・・。何故か?

 実は、上顎の前歯の骨は、とても薄くもろい構造になっています。
ですから、歯を抜いて治癒を待つと、骨がしっかり固まるどころか、骨が無くなってしまうのです。

 術前のCTで説明しましょう。
下の写真の黄色囲み枠の部分は、上顎の一番外側(一番目立つ部分)の骨で、薄くてもろい構造になっています。
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その部分の歯を抜くと、薄い骨が全部無くなってしまって、骨が固まるどころか、下の写真の赤線囲み枠のように、大きな部分の骨が無くなってしまいます。
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 その結果、何が起こるのか・・・、症例でご紹介しましょう。

下の写真は前歯抜歯症例(冒頭の症例とは別の患者様です)、抜歯前の写真です。

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黄色矢印の歯を抜歯しました。黄色い円の中の歯ぐきの状態をご覧ください。

下は抜歯後、傷口の治癒が完了した後の写真です。
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歯が無くなると同時に、歯ぐきの部分も大きく無くなっているのがお判りいただけますでしょうか?(黄色丸部分)

 結果、この状態でブリッジをしたとしても、その空洞に食べ物が挟まりやすかったり、空気が漏れて発音がしにくいブリッジになりやすくなります。
また、仮にインプラントを入れたにしても、隣の歯とくらべて、1本だけ間延びした長い歯が入ることになります。

 これは、現在のインプラントテクノロジーから言えば、重大な審美障害です!
この障害を回避するために、「抜歯即時インプラント」があるのです。

 このテクニックのポイントは二つです。
1.歯を抜くと同時に、その部分には人工骨を入れる。
2.インプラントは、抜歯した部分のやや後方に入れる。
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と、いう訳で、冒頭の症例の術後です。
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ちなみにもう一度術前を・・・。
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 どうだ!、と言うほどの変化はありません・・・(笑)。
と言うかこの変化が無いことが、「抜歯即時インプラント」の一番のキモなのです(^^;。
抜歯と同時に入れるので、歯が無い時がありません。表から見て、歯肉の変化もほとんどありません(歯肉がほとんど下がりません)。
術前、術後の差が無いことが、このテクニックの一番大事なところなのですが、ゆえに、術前術後写真でその価値を表現することは本当に難しいです(^^;。

 でもインプラントはちゃんと入っています・・・。その証拠に・・・。
ほら!
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 最後に裏から見たところの写真を一枚。
裏側に見える、白い丸はインプラントのネジを締めるためのネジ穴です。
これも一番最後に歯と同じ色のプラスティックで埋めて、治療終了となります。
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 では、もう1例、ご紹介しておきましょう。
 患者様は初診時26歳女性。
 不幸にも交通事故に会われました。
下は術前写真です。
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 矢印の歯が折れ、歯ぐきの中の方まで割れていました。
その左右の歯にはヒビが入り、強い知覚過敏を起こしていました。
そこで、折れた歯には「抜歯即時インプラント」を行い、両隣の歯は神経を取り、オールセラミッククラウンでかぶせることにしました。
この症例は、以前にも紹介したことがあります。詳細はコチラをごらんください。

 術中です。
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矢印の部分がインプラントです。その左右両隣の歯は土台の状態です。

 下は術後写真です。
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インプラントの歯の部分の歯ぐきとオールセラミックの部分の歯ぐきを比べて見て下さい。
ほとんど変わりが無いのがわかっていただけると思います。
もしブリッジにしていたら、真ん中の部分の歯ぐきが下がって、こんな審美的な回復は望めませんでした。

 すべての治療に言えることですが、すべての症例に必ず好結果が期待できると言う訳ではありません。中には思うような結果が出ない事もあることは承知しておいていただきたいと思います。
ただ、一度骨が無くなってしまったら、この状態に戻すのは本当に難しい道筋になるのは事実です・・・。

 前にも言いましたが「抜歯即時インプラント」は、美しく前歯にインプラントを入れるのに欠かせないテクニックです。
前歯のインプラントをお悩み中の方がいらっしゃれば、歯を抜いてしまってからでは手遅れです。一度ご検討下さい。





# by healthcarenews | 2018-03-25 00:49 | インプラント

インプラント再考・9 両方の歯を削らない!1本からのインプラント・・・

 今夜のヘルスケア通信は、インプラントについて改めて考える・・・、「インプラント再考」の第9夜、題して「両方の歯を削らない!1本からのインプラント・・・」です。
 前回まで、ブリッジの功罪と寿命について見てきました。単純にブリッジとインプラントを比べるとインプラントの方が寿命が長い話もしました。
くどいようですが、ブリッジを全否定している訳でない話もしました。現に、ブリッジで20年以上機能している症例もいくつも持っています。
特に、歯が抜けたところの両方の歯が、すでに削ってかぶせてあるような歯は、ブリッジの選択はおおいに「有り」だと思います。

 逆に、両方の歯が、ほとんど治療されていない(あるいはわずかな詰め物がある程度の)綺麗な歯の場合、これはインプラントを選択したほうがメリットが大きくなります。

 症例に行きましょう。
症例1
 患者様は44歳、女性。
術前口腔内写真です。

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術後です。
 
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下は術前のレントゲン写真です。黄色丸の中の歯を1本失いました。
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術後レントゲンです。両隣の歯を一切削らずインプラントを入れてあります。
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 もう一度術後の口腔内写真です。手前側の小臼歯は、まだ生まれて一度も虫歯になっていない綺麗な歯です。これを削るのは本当にもったいない。
奥の大臼歯も咬み合わせの部分に小さなプラスティックが詰めてあるだけです。これらの歯は削らない事で、その歯本来の寿命をまだまだ保つことができます。
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 このような症例の場合、審美的にも、実はコスト的にも十分納得がいくものになります。
ご覧のように、2本の歯は削ってませんので、入ったセラミックは1本のインプラントの部分のみで十分審美的に治療できます。
 これが、保険で安価に済ませ、前後の歯を削るブリッジを入れると3本金属の歯が入ります。
それを嫌い、審美的に3本の白いセラミックブリッジにすると1本10~12万円はしますので、費用はその掛ける3本分という事になります。
インプラントは1本、40万円程度ですので、その前後の歯を削るというリスクを勘案すると、そのコスト差はほとんど無い、と言えます。

症例2
 患者様は37歳、女性。1本インプラントになると、徐々に年齢が若くなることにお気づきでしょうか?
術前口腔内写真です。
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症例1と同様に、小臼歯は1度も削ってない綺麗な歯、大臼歯も小さな銀が詰まっているだけです。
レントゲン写真です。黄色丸の中が抜けています。
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インプラント埋入して治癒待ちの状態です。
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術後です。
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 この症例のメリットも、症例1とまったく同じです。歯1本1本がそれぞれの生理的動揺を含む機能を、それぞれで維持していますので、お手入れさえ良ければ長期間寿命を保つことができます。
術後レントゲンです。
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症例3
 患者様は54歳、女性。この症例も1本インプラントですが、今回は奥の歯が削ってある症例です。
術前です。抜けてある奥の歯は、もう削ってありますが、すでに審美治療としてハイブリッドクラウンが入っています。
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そして、それよりも問題なのは、手前側の小臼歯が内側に傾いて生えている「舌側転位歯」という事です。これでは両方の歯を平行に削って作る精密なブリッジを作ることはできません。

 術後口腔内写真です。
両方の歯を触らず、1本だけインプラントを入れています。
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術後レントゲンです。
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症例4
 患者様は59歳、男性。
術前口腔内写真です。
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 同じく小臼歯は綺麗な歯です。大臼歯はやや大きな金属が入っていますが、ブリッジはもっと大きく削ることになります。
術後です。
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 術前レントゲン写真です。
結局、下の写真の黄色丸部分、上下に1本ずつインプラントを入れています。
左側、赤丸部分も上下ともブリッジが崩壊していました。
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左下にはブリッジを入れなおしています。
右下1番奥の歯と。右上小臼歯部にインプラントを入れる事で、右側の噛み合せを確保してから、左側の治療にかかった症例です。
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現在、左上は治癒待ちです。治り次第サイナスリフトを行って、インプラント埋入予定です。

 予防歯科の進歩で、特殊な体質で歯が弱い人以外(経験的に言うと、虫歯、歯周病共に、そういう体質の人は10人に1人もいないと思います。)、適切な生活習慣を送り、適切な時期に治療を受け、適切な歯磨きと適切なメンテナンスを受けてもらっている限り、昔みたいに、年を取ったらどんどん歯が悪くなって抜けていくなんて事は、もう過去の亡霊になりました。

 そういう方は、少なくとも80歳を超えて、何かの免疫のバランスが狂ったり、認知症にでもなって自己管理がまったくできなくなるまでは、大きく歯を失って入れ歯・・・、という事は、これからはあまり起こりえないと思います。
 しかし、若い時に不用意に大きなブリッジを入れてしまっていると、歯そのものの寿命よりはブリッジの寿命のほうが短いですので、ブリッジの寿命が尽きた時に、大きく歯を失う事になります。ですので、小さいブリッジはまだいいのですが、大きいブリッジを入れるときは、一応、将来的なリスクもお話しさせていただいています。

 人間ですので、一生1本の虫歯もできないように完璧に自己管理する、というのは無理な話です。いろんなことが起きますので、歯の何本かは失う事もあるかもしれません。
 上の症例4の患者様で、59歳までに失った歯は5本。これでも50歳頃まではヘビースモーカーでした。あと予定のインプラントは左上2本ですが、ひょっとすると何年後かには、次は左下のブリッジが悪くなって、左下にもう1本追加になるかもしれません。それでも5本です。この5本で両奥の奥歯の噛み合せを確保することができますので、うまくメンテナンスできればあと20年ぐらいは十分安定して物が噛めると思います。

 5本もインプラントを入れたらすごい金額じゃないか!ってお叱りを受けるかもしれません。確かにそうです。しかし、皆さんに5本が必要な訳ではありません。要は最初の1本から・・・。奥歯さえしっかり確保しておけば、80歳になっても多くの歯を残しておくことができますので、そこからどんな治療もすることができます。
「歯を失うドミノ倒しから、健康のドミノ倒しへ・・・。」この悪循環を断ち切る最初の1本がとても大切なのです。

 語弊があるかもしれませんし、お叱りを受けるかもしれませんが、インプラント治療は「お金で買える数少ない健康のひとつ」なのです。

 





# by healthcarenews | 2018-01-14 21:12 | インプラント

インプラント再考・番外編 ブリッジとインプラントの寿命について・・・

 今夜のヘルスケア通信は、「インプラント再考」の番外編、ブリッジとインプラントの寿命について、です。
そんな大事なことが、なんで番外編なの?って声も聞こえそうです・・・・。が、実は治療法の寿命を「学問的」に表す、というのはとても難しいのです(-_-;)。

 5年生存率○○%とか、10年後の成功率上顎は○○%、下顎は○○%、なんて研究報告はあるにはありますが、それは言わば全部過去のデータです。
 10年以上記録をさかのぼった研究は、言い換えると10年以上前に開発されたインプラントである訳で、インプラントは今でも「日進月歩」急速に進化していますので、過去のデータはまったくあてにならない訳です。

 さらに難しい事を言うならば、それらの研究には「研究の対象となった集団」があり、「研究の方法」があり、「データを処理した統計方法」があり、と、その読み取りによってまったく変わってくるのです。成功率○○%という数字がひとり歩きしたときは、それは商業上のトリックだと思っています。

 それに、例えば「貴方の寿命は○○年です。」って言われて、「あー、そうですか。」って素直に信じる人はいないでしょう。「人それぞれでしょう。」そう答えるでしょう。まったくその通りです。その人の体質や生活習慣によって全然違います。だから「寿命」は学問では表せません。

 それに今回はもうひとつ「番外編」とした大きな理由があります。それはネタ元です。
コンビニで580円で売っていた、この本です(;^ω^)。
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 これは学問じゃないよなあ(笑)。
場合によっては「カフェテラス」のネタですが、流れ上ヘルスケア通信へ・・・・(^^;)。
でも、この本をコンビニで見つけて、つい買っちゃった理由は、出てきた「歯の治療の寿命」が、専門家としての臨床経験とかなり一致していたからです!。

 例えば、61ページ、「歯の充填剤」の寿命のページでは・・・、
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 僕、個人の成績としては、もう少し良いと思っていますが、雑な歯科医師がやるとこんなものなのかなあ(;'∀')。
 保険診療の「ちゃちゃっ」と詰められるレジンに関しては、充填した場所によっては強度、耐久性から考えてこんなものかもしれません。
だからこそダイレクトボンディングは治療に2時間近くかけるのです。

 62ページ、「義歯」の寿命のページでは、義歯、ブリッジ、インプラントについての記述があります。
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続きです。
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 入れ歯に対する評価はもちろん、保険のセメントの平均寿命が7年と言われていますので、ブリッジの寿命に対する記述もおおむね一般的な臨床感覚に合っています。
 感心した、というか共感したのは次の部分ですねー。「寿命は歯科医師や歯科技工士の腕前はもちろん、食生活や土台になる歯の状態、普段の手入れなど、あらゆる要素によって左右されるので一概には言えないのだが・・・」その通り!ポン、と思わず膝を打ちそうになりました(笑)。
 でも、個人的にはもう少し長いかな(笑)。一応目標は寿命10年ですね。もちろんもっともつものもありますし、もたないものもあります。

 なお、保険外のブリッジに関しては、申し訳ないですが、間違いなく保険診療のものより寿命が長いです。それは症例選択の違いであったり、デザインの違いであったり、材質の違いであったり、精度の違いであったり、セメントの違いであったりします。
 そして、インプラントはそれより寿命が長いと感じています。この点も、僕の評価と一致しています。当院のインプラント最長症例で現在15年経過です。でも今でもまったく問題ありませんので、20年以上はいくのかもしれません・・・。

 そして最後のコメント、「できれば自分の歯を大切にして、長くつき合いたいものだ・・・。」まさにこれ!です。予防が大事。一番です!。

 歯科医院のHPや歯科関連のサイトには様々に、入れ歯、ブリッジ、インプラント、の説明がありますが、時には誘導的であったり逆に情報が少なかったりして、なかなか客観的なものがありません。その意味で、この本は中立的で画期的だったと思っています(^^;)。
でも、まあ、この本を今まで患者様のカウンセリングに使ったことはないのですが・・・・。だから番外・・・。
 



# by healthcarenews | 2018-01-11 23:17 | インプラント

インプラント再考・8 ブリッジの限界と功罪・Part3

 インプラントを改めて考える・第8夜 「ブリッジの限界と功罪」のパート3です。
そろそろ飽きてこられたと思いますが、ブリッジのリアルを正確に理解して頂きたいので、もう2症例だけご紹介したいと思います。

症例4
 患者様現在68歳、女性。インプラントのオペは2011年になりますので、オペ時は62歳前後でしょうか。
初診時写真です。
右下の小臼歯を2本削って、大臼歯分を1本だけ補う「延長ブリッジ」が入っています。
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もう、今なら絶対にしない治療ですね。
横から見たところです。
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テコの原理で、手前側の歯に強い力がかかり、小臼歯を痛めるか、セメントがゆるんですぐにはずれてきます。

 案の定、はずれてきました。
下の写真は術前のレントゲン写真です。
幸い、外れてきたタイミングが早く、小臼歯はほとんど痛んでいませんでした。
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 まず、小臼歯2本をセラミッククラウンで修復。咬合を確保しました。
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 次に右下奥にインプラントを2本入れました。
術後のレントゲン写真です。
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術後、口腔内写真です。
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 横から見たところの口腔内写真です。
術前です。
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術後です。
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奥歯のしっかりした咬み合わせの回復を、審美治療と同時に達成しました。

症例5
 現在66歳、男性。オペ時は2014年、62歳か63歳ってとこでしょうか。
オペ時年齢が上がるにつれて、重症度も(インプラント埋入本数も)やはり上がってきます。

 初診時写真です。
まことに申し訳ないのですが、非常に映りが良くない(-_-;)。
初診時写真は貴重なので注意して撮るようにはしてるのですが・・・m(__)m。
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下は術前レントゲンです。
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 右下(向かって左下)の歯が、大臼歯2本、小臼歯1本計3本の奥歯がありません。
右側の小臼歯1本で噛める訳はなく、ずーっと左側のブリッジばかりで噛んできました。
その結果、左上ブリッジの一番奥の歯が重度の歯周病になってしまいました。
下レントゲンの黄色丸の中、歯を黒い影が取り巻いています。歯周病で骨が無くなってしまったのです。
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ようよう両方の歯で噛めなくなって、来院なさいました。

 とりあえず、まだ左には歯がありますので、右下の咬合回復を優先します。
右下にインプラントを3本入れました。前歯にも問題ありですが、くどいようですが奥歯の咬み合わせが先です。
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インプラントのかぶせ(上部構造)にはセラミッククラウンを用いました。(下写真)
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 下は左上ブリッジの術前口腔内写真です。
黄色丸の中の歯が問題の歯です。ちゃんとしてるように見えますが逝ってしまっています。
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小臼歯はまだ使えましたので、一番奥の歯だけ抜いてインプラントを2本入れました。
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下の写真は、セラミックの上部構造(インプラントのかぶせ)を入れたところです。
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術後の全体のレントゲン写真です。上下左右計5本のインプラントを入れ、奥歯の噛み合せを確立しました。
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 改めて、術後の口腔内写真です。
右です。奥歯の咬み合わせが回復しましたので、前歯も修復しています。
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左です。
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正面から見たところです。
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 この一連の「ブリッジの限界と功罪」で、ブリッジのリアルはだいたい理解して頂きましたでしょうか?
前にも書きましたが、僕はブリッジを全否定している訳ではありません。
しかし、ブリッジ治療には、寿命があるのは否定できない事実です。

 ではインプラントの寿命はどうなのか?・・・、という話に今度はなる訳ですが、ブリッジに比べると、きちんと作られて、きちんとメンテナンスされたインプラントは寿命が長いと言えます。これはまた後ほど触れます。

 ここまできて出てくる選択肢は、ある1本の歯を失った時、とりあえずブリッジにしてから、その歯がダメになってから2本以上のインプラントを入れるか、
最初に両方の歯を削らずに、1本のインプラントで済ますか、という選択です。もちろん「入れ歯」という選択肢もあります。

 次回は、新章(;^ω^)!「両方の歯を削らない!1本からのインプラント」というテーマでお話します。




# by healthcarenews | 2018-01-10 12:39 | インプラント

インプラント再考・7 ブリッジの限界と功罪・Part2

 今回のヘルスケア通信は、インプラント再考・第7夜、「ブリッジの限界と功罪」のパート2です。
それでは前回紹介できなかった症例をご紹介していきましょう。

症例2
 患者様は現在66歳、女性。
手術は2011年に行っていますので、初診時は60歳になるかならないか、というところです。
下は術前の口腔内写真です。

 左下のブリッジが取れてしまいました。一番奥の歯がドロドロの虫歯になっています。
この患者様は、もう昔に第1大臼歯を抜いてしまっていて(昔は第1大臼歯から痛んだものでした・・・)、小臼歯と第2大臼歯をつないでブリッジを入れていました。
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でも、もうワンパターンで恐縮なくらい、奥の歯のブリッジの土台が割れてしまいました。
 下は術前のレントゲン写真です。
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左下の黄色丸内の歯が割れています。
 でも、レントゲンをよく見ると、反対側の右下の歯も無い事がわかります。
右下の口腔内写真です。
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 実は、この患者様は、先に右下の奥歯を失っていました。
入れ歯を入れてみましたが、とても耐えられず、左下のブリッジばかりで噛んでいました。
そして、今度は左下の奥歯がその負担に耐え切れず、割れてしまったのでした。

 このまま放置すれば、今度は残った小臼歯と前歯を失っていくのは目に見えています。
この患者様は、人前で話をするのがお仕事なので、入れ歯はとても無理!ということでインプラント治療を選択されました。

 術後左右口腔内写真です。
左下は、一番奥の歯を抜歯してから、2本インプラントを入れました。
左下です。

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右下です。こちらにも2本インプラントを入れました。
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術後レントゲン写真です。
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 術前、術後の正面写真です。
術前です。
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術後です。
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 奥歯が自然にかみ合っているのがわかって頂けると思います。
咬み合わせも自然で、発声にも違和感なく、食事もおいしく食べられると喜んでいただいています。

 この患者様も、インプラント4本の他には、神経を取った歯が2本あるだけで、残りは大きな治療をした歯ではありません。
歯磨きもていねいで、いつもピカピカに磨いてメンテナンスに来院してくださっています。
まだまだ安定して長期間使っていただけるものと思っています。

症例3
 患者様は現在66歳女性、手術時は2012年ですので、初診時は症例2と同様、やはり60歳前後、ということになります。
術前写真です。
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 左下ブリッジが折れてしまいました。、一番奥の歯は歯周病が進行していて、ブリッジと一緒に抜けてしまいました(黄色丸の中)。

初診時レントゲン写真です。
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 このブリッジは、第1大臼歯と第2大臼歯を共に2本失っていたものを、小臼歯2本と親知らずをつないで、計5本のブリッジにしたものでした。
 大臼歯部は、人間が物を噛む力の大部分を支えています。ですから、大臼歯1本無くなるだけでも大変なのに(できたらすぐにでもインプラントを入れたいところなのですが)、2本無くなると、その前後の歯への負担はかなりのものになります。

 まだ削っていなかったらいいのですが、大臼歯2本無くなった場合、小臼歯2本と親知らずを削って5本ブリッジにすることを、保険診療で認めていますので、「入れ歯」を入れるよりは、と、前後3本の歯を削った、こういう5本ブリッジは結構無造作に多く入れられています。
 
 しかし、もともと小臼歯と親知らずは、大臼歯に比べ噛み合せを支える力が弱いところに、5本分の遠い歯をブリッジでつなぎますので、この治療法は、ブリッジの欠点ばかりが強調されるデザインとなってしまいます。ですので、このデザインのブリッジは、よほど慎重に、ていねいに作らない限り、遅かれ早かれこの症例と似たような結末を迎える可能性が高いと言えます。

 下は小臼歯部の拡大レントゲン写真です。
第2小臼歯の根っこの先に黒い影ができています。咬み合わせの負担に耐え切れず、歯が割れてしまったのでした。
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 結局、この歯も抜くことになり、このブリッジは計4本の歯を失ってしまいました。

 術後です。
左下に3本のインプラントを入れました。
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術後口腔内写真です。
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 術前、術後を左から見たところの写真です。
術前です。
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術後です。
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 術後の全体のレントゲン写真です。
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 左右バランス良く咬みあって、咬み合わせも安定しています。臼歯部が安定している分、前歯をほとんど触ることなく良好に経過しています。

 誤解の無いように補足しておきますが、僕はブリッジを全否定している訳ではありません。
現に、この患者様にも、右下には第1大臼歯を抜いてブリッジを入れています。

 インプラント治療は、素晴らしい治療だとは思いますが、かかるコストとリスクを考えても、歯が抜けたところをすべてインプラントで補える訳ではありません。
ブリッジはその安全性と効率という意味で、当院でも今でも歯が抜けたところの治療の第一選択です。
要は、やはりバランスだと思っています。

 ブリッジの利点と限界、特に長期的な経過に対する考察をしっかりしたうえで、ブリッジで治療するのかインプラントを行うのか、を決める事。
もちろん患者様の選択が第一なのですが、奥歯をしっかりと守ることが、長期的に見て、すべての歯を守るために必須であることが明白である以上、ブリッジとインプラント、両方のカードを正確に使いこなして患者様の治療方針を決め、進めていく事が、僕の役目であり責任であると思っています。
またそれが患者様の将来への大きな財産になると信じています。

 



# by healthcarenews | 2018-01-08 21:48 | インプラント

インプラント再考・6 ブリッジの限界と功罪・・、インプラント以外の治療について

 今回は、「インプラントについて改めて考える」の第6夜・・・、歯が抜けた時のインプラント治療以外の選択肢についてです。
歯が抜けた時の治療の選択肢には、「入れ歯(義歯)」「ブリッジ」「インプラント」があります。
それぞれ、利点欠点がありますが、そこは今日のテーマではありませんのでまた改めて・・・。

 言葉だけではピン!と来ない方もいらっしゃると思いますので、とりあえず簡単にご紹介しますと、
「入れ歯(義歯)」は下の写真のようなものです。
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 歯が無いところに人工の歯を作り、無い部分の両側の歯に針金をかけて口の中に入れます。
実は僕も小さな1本義歯を1回だけ入れたことがあるのですが、正直、違和感が半端ないです(;´・ω・)。
針金のところが気になって、いつも舌でぺろぺろ触ってしまい、舌に傷がついてしまいますし、もやしなんかも針金にいつも挟まります。
ですので、食事のたびに取り外して洗浄・・・、まあ当たり前なのですが、する必要があります。
 この写真の入れ歯でいうと、3本ないところを2本で支えてますので、隣の歯にはそれぞれ2.5本分の力がかかっている訳です。
これでは力学的に長期に使えるはずはなく、両隣の歯は早晩痛んでしまいます。

 ブリッジは、歯が無い部分の両隣の歯を削って、人工の歯をセメントで留める治療です。
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 上の写真のように、歯が無いところの両方の歯を削って、下の写真のように、人工の歯をセメントで取り付けます。
両隣の歯に「橋渡し」するように人工の歯が入りますので「ブリッジ」と呼ばれています。
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 ブリッジは、入れ歯と違ってセメントで取り付けますので、取り外して洗浄・・、なんて面倒はなく、針金も無いですから舌触りも噛み合せも、違和感はありません。
自分の歯にセメントで留めますので、自分の歯のセンサー(これがとても敏感なのです)が働いて、きちんと調整すれば、違和感無く自分の歯のように噛めます。
インプラント登場以前は、これが歯が抜けた時の治療の第一選択とも言える当たり前の治療でしたし、今でも、多くの患者様にこの治療を行っています。
 ただ、このブリッジ治療には大きな欠点が二つあります。ひとつは、両隣の歯を削ってつなぐ、と言うこと。もうひとつは、やはり歯が無い部分の負担が両隣の歯にかかる、と言うことです。

 それでは、本日のメインテーマ、「ブリッジの限界と功罪」について見ていきましょう。
症例1
患者様は、現在43歳女性。
左下の小臼歯と第1大臼歯をつないで入れていたブリッジが取れてしまいました。
中を見てみると、第1大臼歯が、虫歯でボロボロになっています。(鏡像ですので、左右逆に見えます)

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 昔のブリッジは当たり前のように神経を取って削って、銀歯をかぶせていました。
そうすると銀歯の中で虫歯になっても感覚が無く、気が付かないという事態が起きてきます。
銀歯はレントゲンも通しませんので、中の虫歯は見つけるのが難しい時があり、なんか噛み合せが変だなあ・・・、と、思っているうちに、ボロッとかぶせものが取れてくると、中はこんな具合になっているのです。
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 上の写真は、その部分のレントゲン写真です。土台は完全に溶け落ちて、歯根の先までバイ菌が回っています。
この歯は抜歯しか治療法はありません。

 幸い、手前側の小臼歯は、神経が生きていたため被害が最小限で済み、この歯は単独で生かしかぶせて、第1大臼歯は抜歯して2本分のスペースにインプラントを入れることにしました。
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 歯が無いところにインプラントを2本埋入し、治癒後土台を作ります。
その後セラミッククラウンをかぶせています。
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下は、その部分のレントゲンです。
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 それぞれの歯を単独で機能させることで、それぞれの歯の負担を軽減させます。
また、両隣の歯を必要以上に削っておらず、掃除もしやすい形態にしているため、虫歯にもなりにくい状態にしています。
 
 今回、ブリッジが取れてしまったら、中の歯が虫歯になっていた、という症例をご紹介しましたが、ひょっとしたら年配の方なら、同じような経験をされた方が多いのではないでしょうか?
 実は、多くのブリッジは、遅かれ早かれ、このような結末を迎えます。
それは、ブリッジが、「離れた歯をつないで、そこで噛む」という根本的な機能と構造を持っている宿命でもあります。少し難しく感じられるかもしれませんが、大切なことなので、ここで書いておきます。

 皆さんは、人間の歯は、例えば重度の歯周病(歯槽膿漏)でグラグラしていない限り、顎の中で固く固定されているものと感じてはいませんでしょうか?
いや、事実、毎日治療している僕たちでさえ、健康な歯は、顎の中で固く留まっているものと感じています。指で動かすぐらいではびくともしませんし、そうでなければ固いものはうまく噛めません。
 
 しかし、人間の噛む力は、自分の体重と同じくらいと言われています。アスリートなどは、自分の体重の倍の力で噛んでいたケースもあります。
そんな時、ミクロの目で見ると、歯や顎の骨も生体の一部ですので、生理的動揺と言って、強い力をいなす自由な動き(逃げ)を持っているのです。
 それは上顎と下顎で違い、だいたい上顎で150ミクロン、下顎で50ミクロンくらい動きます
たかが50~150ミクロンほどの動きですが、遠く離れた歯を2本つなごうとすると、このわずかな動きが大きく運命を左右します。

 ブリッジそのものは、だいたい丈夫な金属等のフレームでできていますので、体重程度の力がかかっても変形することはありません。
しかし、土台のほうが動くのですから、どこかに「その動きのひずみ」が現れます。
これは、多くは歯とブリッジを止めているセメント部分にかかってきます。だからブリッジを留めても数年~10数年ののちセメントが溶けてしまうのです。

 そこで、セメントが溶けたらパッとブリッジが取れてきてくれたらまだいいのですが、多くは溶けた歯のもう片方の歯のセメントはしっかり残っているため、いつまでも口の中にあり、セメントが溶けたところから虫歯になっても気づかないまま、ボロッと取れてきた時には、その歯はもう手遅れ・・・・。これがブリッジの最も恐ろしい結末です。

 しかし、遅かれ早かれ来る、このブリッジの恐ろしい結末は、今まであまり問題にはされませんでした。
その理由のひとつは、おそらく30年ほど前、まだ虫歯が洪水のごとくあった時代。次から次へと削ってブリッジを入れなければ、どんどん虫歯がひどくなって、重大な健康被害を起こしたから・・・。もう一つは数年でブリッジがダメになったら、また抜いてまた削ってブリッジを入れて・・・。そんな繰り返しで、年を取ったら、いつか入れ歯になることが、みんな当たり前と思っていたから・・・(年を取ったら入れ歯、は全然当たり前ではありません。)。
しかし、予防が発達した現代、そんな当たり前はもう通用しません。死ぬまで「入れ歯無し」で自分の歯で噛む。ここが目標になります。

 残念ながら、現在でも、歯が抜けた時の治療の第一選択は、やはりブリッジです。
これは、歯が抜けた時の治療の選択肢の中で、保険でできる安価で最も効率的な治療法だからです。
だから、雑に作られたブリッジをできるだけ入れてほしくないと思います。いつか必ず両方の歯の寿命を縮めます。

 しかし、どうしてもブリッジでしか治療できない場合も多々あります。その場合、ブリッジの持つ根本的な欠点は解消できませんが、少なくともその欠点を理解して、細心の注意を払って作っていく事はできます。それは歯の欠損の位置、削り方、咬み合わせの与え方、上顎と下顎の違い、患者様の咬合や虫歯、歯周病リスクの勘案、あとは、取らずに済むものならできるだけ神経を取らないこと、などなどです。そして、万が一そのブリッジがダメになった先の治療の選択肢がどうなるのか?そこまで計算に入れる必要があります。20年後の事を考えて治療する、というのはそういう事なのです。

 改めて「症例1」のまとめをしたいと思います。
術前の全体のレントゲン写真です。
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実は右上にも病巣がありました。
前にも述べた「一番奥の歯」です。多くはこの部分から悪くなっていきます。
下のレントゲン写真黄色い丸の中の黒い影が感染病巣です。

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ていねいに根管治療を行いました。
術後、病巣は治癒しています。
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改めて、術後全体像のレントゲン写真です。
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 実は、この患者様は、右上と左下以外、治療の必要な部分はありませんでした。
もともと虫歯のリスクは高くなく、歯周病のリスクも高いほうではありません。
なぜ、左下の歯を失ったのか、今では理解に苦しむ部分もありますが、まあ時代の不運だったと言えるでしょう。

 左下にインプラントをしないで、前後の歯を大きく削り大きなブリッジを入れていれば、やがてまたそのブリッジは外れ、今度はさらに大きく左側の歯を失う事になります。左で噛めなくなれば右の負担が増え、右上の歯の寿命も縮めるでしょう。いずれその影響は前歯にも出てきます。昔の人はそうやって歯を失っていったのです。

 幸いインプラントを選択できたことで、インプラントの前後の歯4本と右上の奥歯の寿命を延ばせたと思っています。
最初に述べたようにこの患者様はまだ43歳です。
女性の平均寿命が90歳に近づく現在、まだまだ50年近く、この歯は使わないといけない訳です。

 もちろん、このままであと50年はいける!なんて大口はたたきませんが、目に見えて明らかな歯を失う「X-Day」を少し遠い未来に先送りにできたとは思ってます。
このインプラントは、この女性の将来にとって大きな福音になると信じています。

 ちょっと、今回は長文になって、症例1だけで終わってしまいました(;^ω^)。
次回も引き続き、まだまだある「ブリッジ→インプラント症例」の紹介をしたいと思います。
お疲れさまでしたm(__)m。
 



# by healthcarenews | 2018-01-07 12:17 | インプラント

インプラント再考・5 歯を失った時の最初の1本・多くは奥の歯を最初に失う・・・

 インプラントネタ5連発です。
正月休みとは言え、5連発は目がチカチカしてきた・・・・(;^_^A。もう少しだ!がんばろう!

 今回のネタは、題して「歯を失った時の最初の1本・多くは一番奥の歯を最初に失うという事・・・」って感じですかね。

 前回までに、「奥歯の咬み合わせが前歯も守るので奥歯が大事」そして「多くは一番奥歯から歯を失う」って話はしました。
では、その一番奥の歯が無くなったらどう治療するのか?という話が今回のテーマです。
申し訳ないですが、結論だけ言っておきます。インプラントしかないです。あとは抜けたまま放置しておくか・・・・。

 ここでもう一度、なぜ一番奥の歯が早く無くなるのかを復習しておきましょう。
親知らず(智歯)がある人(と約12歳以下の子供)を除いて一番奥にある歯は第2大臼歯(もしくは12歳臼歯)と呼ばれる歯です。
この歯が早く悪くなりやすい原因は、

1. まず一番奥にあるため、歯ブラシが非常に届きにくい。そのため食べかすが残りやすく虫歯になりやすい。(ビスケット食べた時に奥歯の横にこびりつくでしょ?あれです。)
2. 唾液の流れが、この歯より手前に流れるため、食べかすが残りやすく、体の予防作用も働きにくい。(同じく食べたビスケットがいつまでも残っているのも、そういう理由です。)
3. 一番奥で、治療も難しい位置にあるため、治療がうまくいかない時もある。(大きな声では言えませんが・・。だからマイクロやルーペが要るのです。)

 ここからは、少し難しい話になります。
4. 第2大臼歯は、顎の関節に最も近い位置にあるため、テコの原理で、その歯に強い咬む力が働く。
5. また、咬筋と呼ばれる咬むための筋肉が、第2大臼歯のすぐ横を通っているため、筋肉の最も強い力が働く。
6. 咀嚼(物を嚙みこなしていく)運動の時、まずこの歯が一番最初に咬み合うため、一日何千回もの衝撃が、この歯に加わる。
7. これら、強い咬み合わせの力が、常にかかることにより、歯が割れやすくなったり、歯周病が、そこだけ重度に進むことがあります。
8. 時には、その奥に親知らずがあり、その親知らずが原因で、虫歯になったり、歯周病になることがある。(親知らずが斜めに生えていると、この第2大臼歯との間に物がはさまり、虫歯になりやすくなります。また、では親知らずを抜くと、今度は第2大臼歯の後方の骨がゆるんで、さらに歯周病が進行しやすくなります。)

 以上のように、長期にわたって一番奥の歯の健康を保つのは、なかなか大変なのです・・・(;´・ω・)。
では、放置したらどうなるのか?その反対側の歯(上が抜けたのなら下の歯、下が抜けたのなら上の歯)は咬み合いませんので、徐々に抜けてきます。咬合の力は1本手前の歯に移るので、今度はその歯にヒビが入ったり、歯周病が進んだりとトラブルが起きてきます。単純に見ても計3本の歯に悪影響がでるのです。

 まあ、文章にも飽きてきたので症例にいきましょう。

症例1
 患者様は2018年1月現在55歳、女性。
2008年の手術ですので、手術時年齢はこれから9年ほど引いて下さい。
今回の「最初の1本」に登場される患者様は、大体皆さん50代前後。アラフィフ、という事になります。
前回の複数本のインプラントが必要な患者様に比べると、やや平均年齢が若くなります。
逆に言うと、それくらいの年齢が、歯が悪くなる最初の1本の分かれ道・・・、という事になります。

 術前写真です。
右下一番奥に古いかぶせが入っていました・・・。最近は一番奥の歯から悪くなるので、この歯からかぶせられます・・・。
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・・・ですが割れます。この部分の歯はよく割れます。

 割れた歯を抜歯しました。下の写真は抜歯後です。
少し映りが悪くて、暗くて見にくいですが、奥歯のかぶせがありません。
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1本だけ、奥歯にインプラントを入れ、奥歯の支えを回復しました。
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下は、約9年後の写真です。1度かぶせを外してチェックしてみましたが、何も問題はありませんでした。
もちろん手前の第1大臼歯にも異常は出ていません。
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症例2
 この患者様は現在58歳、女性。
左下一番奥の歯がかぶせてあります。
奥から先に悪くなるので、ここだけかぶせてあるのです。
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で、強い力がかかるので割れます。割れたら抜歯です。
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 1本だけインプラント治療を行いました。
第1大臼歯を守るためには、この方法しかありません。
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セラミッククラウンで奥歯の噛み合わせを回復しました。

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症例3
現在59歳、男性。
術前です。
ワンパターンですが、本当にワンパターンに感じるくらい、この奥歯の治療は多いです。
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割れているので抜きます。
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 奥を抜歯すると、しばらくして、手前の歯の一部が欠けました。
咬み合わせの強い人は、常にそれだけ歯に強いストレスがかかっている、という事です。

一番奥にインプラントを1本入れ、奥歯の噛み合わせを確保し、手前の歯を守ります。
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症例4
 まだまだたくさんあるのですが、本当にワンパターンに感じると思うので、このタイプのインプラントは次の症例で最後にしたいと思います。
患者様は51歳、女性。
下顎右側の一番奥の歯を失って、その手前、第1大臼歯と第2小臼歯を削ってつなげる、いわゆる「延長ブリッジ」と呼ばれる治療を受けていた患者様です。
延長ブリッジがなぜダメなのか?なぜ一番奥の歯の治療が、インプラントか放置かの究極の2択しかないのか?その答えをお教えします。

 でも、実はまずは左下一番奥から・・・(;^_^A。ワンパターン治療です。
左下一番奥の歯のかぶせの歯根が割れています。ワンパターンです・・m(__)m。
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抜いてインプラントを入れます。
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インプラントを入れ咬合を回復しました。と、ここまではワンパターン。
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 ここで、この左下のインプラントが具合がいいので、右下のブリッジもやり替えて下さい!という事になりました。
下の写真です。右下には、こんな銀歯が入ってしまっているのです。
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 ブリッジをはずしてみます。
歯は大きく削られてしまっています。
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 これを入れた先生は、まだ非常に慎重に先の事を考えて治療をしてくれていたために、削られた被害は最小で済みましたが、延長ブリッジは力学的に無理な力がかかるため、雑な先生が入れると、手前側の歯があっと言う間に虫歯になってダメになってしまいます。

 術後です。
一番奥はインプラントで単独に咬合を回復。
削られた手前側の2本は、オールセラミックを用いて、それぞれ単独で接着治療をしました。
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 歯には、それぞれ生理的動揺、と言って、強い力がかかった時に、それをいなす力があります。
それを無理してつないでしまうことで、かえって歯の寿命を縮める時があります。
また、従来型のセメントによる合着と違い、最新の接着剤を用いて接着することで、セメントが溶けたところから虫歯になるリスクも減らすことができます。

 改めて術前、横から見たところです。
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術後です。
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 ブリッジは、やはり隣の歯を削る分、隣の歯を痛めるリスクが出てきます。
またダミーと呼ばれるニセの歯の部分に、よく物がはさまる、という不具合を訴える方もいらっしゃいます。

 この患者様は、その不具合もリスクも解決し、審美的にも十分満足されて、喜んで頂きました。
はじめに延長ブリッジが入っていた分、オールセラミック2本分、余計なコストがかかりましたが、まだ手遅れではありませんでした。

 40代半ばから50代にかけて、長い間ストレスにさらされていた一番奥の歯にトラブルが起こることは、本当に良く起こります。
その時、どう治療するのか?
この部分に1本だけの入れ歯、という治療は普通あり得ませんので、放置かインプラントか?究極の2択になります。大変悩ましい選択です。

 次回は「いわゆる普通のブリッジの功罪」。その次は「できるだけ歯を削らないために・・・」。そんなタイトルでお話をしたいと思います。

 





# by healthcarenews | 2018-01-03 19:38 | インプラント

インプラント再考・4 奥歯の咬み合わせが前歯を守る!

 今回のヘルスケア通信は、「インプラント再考」のパート4、怒涛のインプラント4連発です。
つらつらと以前の記事を読んでいたら、一昨年の年末から去年の年初にかけて、予防歯科の5連発をやっています(笑)。やっぱり、しっかりまとまった記事を書くためには、集中した一定の休みが要るんですよねー。

 と、言う訳で、今年はインプラントネタ。できたらまだまだ行きます。

 今回のテーマは「奥歯の咬み合わせが前歯を守る!」です。いよいよインプラント症例の出番です!
経験から言うと、多くの患者様は、まず奥の歯から失って行きます。何故か?

 少し専門的になりますが、親知らずを除く、一番奥の歯が、「第2大臼歯」で12歳ごろに生えるので別名12歳臼歯、とも言います。
その手前の歯が「第1大臼歯」、これも別名6歳臼歯と呼ばれ、6歳ごろに一番最初に生えてくる永久歯です。

 大臼歯と言うぐらいだから、お口の中で一番大きな歯です。だからしっかりと物が咬めます。
それだけではなく、「歯をくいしばってがんばる」みたいな言葉があるように、強い力を出したり、姿勢を制御したり、肉体的にも精神的にもとても大切な歯です。

 でも、それだけ大きな働きをしている分、それだけ大きなストレスもかかっています。
第1大臼歯は、一番早く子供の時に生えてくるため、その分虫歯になりやすく、早く歯を悪くしてしまいます
第2大臼歯は一番奥にあるため、お掃除がやりにくく、虫歯になりやすい傾向にあります。虫歯になると、今度は奥なので治療がとても難しくうまくいかない時もあります。また噛み合わせの力が強いので歯が割れたり歯周病も進みやすくなります

 昔は第1大臼歯が無い人が多かったのですが、予防が発達した現代では第2大臼歯から先に無くなる傾向にあります。
いずれにせよ、奥歯が無くなると、ストレスは手前に移ってきて、大臼歯が無くなった力を小臼歯が支え切れるはずもなく、ドミノ倒しで前側の歯を失っていきます。

 「2018、インプラント再考、パート1」で紹介した症例も、大臼歯が無くなった後、小臼歯がストレスに耐えきれずダメになった典型です。
パート2、パート3の症例も同様で、奥歯が無くなったために、今度は前歯がダメになった症例です。残念ながらインプラントの選択ができなかったために、前歯を失う結果になってしまいました。「奥歯の咬み合わせが前歯を守る!」まず奥歯をきちんと予防すること。そして悪くなったらきちんと治療すること。将来、歯全体を守るための秘訣がここにひとつあります。

 悪くなった奥歯をどう治療するか?という方法は、今ではいろいろあるのですが、治療の甲斐なくどうしても抜かなければいけなかった場合、しかも、一番奥の歯が無く、入れ歯以外の選択肢が取れない場合(入れ歯では、咬合のストレスを支える事はできず、他の歯を痛めるため)、ここはインプラントの出番!という事になります。

 それでは症例です。
 まずは症例1、これは2007年のオペ、患者様は当時59歳、男性。
左下第1大臼歯は昔に抜いてしまっていて、今度は奥の第2大臼歯が割れました。
今後もたびたび出てきますが、ブリッジは・・・・割れます。前後の歯どちらかが、必ずいつか割れます・・・。
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割れた第2大臼歯を抜いて2本インプラントを入れました。前方の歯はセラミッククラウンで修復。

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術後です。
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上の写真は2014年ですが、現在69歳、治療後10年間、現在も問題なく経過しています。

下の写真は、術前です。奥歯が無く小臼歯だけで噛み合わせを支えます。
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術後です。奥までしっかり噛めるため、前歯の治療をほとんどすることなく経過しています。
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 症例2
これは2008年の症例。手術時66歳。9年経過の症例です。
やはり、奥歯2本がありません。そこそこがんばって予防をしていても、奥歯にかかるストレスはものすごく大きく、必ず奥歯から無くなっていきます。
でも、ここで放置すると前歯がダメになります。
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奥歯にやはり2本インプラントを行いました。
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下の写真は現在です。これも良く噛めているためハイブリッド部はすり減ってしまいましたが、機能的には問題ありません。

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術前の、横から見たところです。

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術後です。前歯は健康な状態を保っています。
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今は75歳。ちょうど右下を治療中なのですが、左で問題なく噛めるため、やはりインプラントにしといて良かった、と喜んでもらっています。

症例3
次も2008年の症例です。
右下にブリッジが入っていましたが・・・、ブリッジの土台の根っこが割れています。ブリッジの土台は遅かれ早かれ、いつか必ず割れます。

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割れた歯は抜歯するしかありません。従来型の歯科治療は多くは歯周病か、噛む力により歯が割れて抜歯に至ったと思われます。
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術後です。インプラント3本埋入しました。
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 下は術後です。
この頃からは、ハイブリッドクラウンをやめてセラミッククラウン中心にかぶせています。
また一番奥の歯は、咬合の力に耐えるため金属にしています。
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 現在の写真です。
ハイブリッドクラウンをやめて、金属とセラミックだけにしているため、すり減りなど変化がほとんど起こっていません。
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 下は術前の右からの写真です。
これを見ただけでも、奥歯が無いと、前歯にどれだけ負担がかかるかは、想像頂けると思います。

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右奥まできちんと噛んでいます。そのため前歯も安定した状態を保っています。
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 この症例も9年経過して、まったく問題なく機能しています。

 今回は、「奥歯が抜けていろいろやったけど、結局悪くなってインプラントに至った!」症例をご覧頂きました。
こんな症例、実はまだまだ、たくさんあるのですが、長くなるので一服しましょう。
次回は、もう少し若い世代の患者様、「歯を失った時の最初の1本のインプラント」たちをご紹介します。



# by healthcarenews | 2018-01-02 22:39 | インプラント

貴方の健康の舵取りを。堺市北区中長尾町、山本歯科医院の歯科に関する情報のページです。


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